ほんかく建築家
■ ほんかく女優。ひらがなにしたことには理由(わけ)がある。本書く、本格女優。例えば室井滋さん。週刊文春に長いこと「すっぴん魂」を連載している。
このエッセイが好きで、単行本になるのを楽しみにしている。飾らない、まさにすっぴん魂な女優さんなんだな、と思う。何気ない日々の出来事をこの人がエッセイに書くと実にドラマチックになるから不思議だ。
本書く、本格建築家として黒川紀章と宮脇檀を以前このブログでとり上げた。藤森さんは日本の近代建築史が専門の大学教授だから「本書く」は当たり前。最近「本格」建築家への仲間入りを果たしたから、ほんかく建築家のひとりとなった。個性的な建築設計もうまいし、文章もなかなかうまいな、と思う。
『アール・デコの館』ちくま文庫、旧朝香宮邸 (現東京都庭園美術館)アール・デコという短命だった建築様式について簡潔に論じている。序文は秀逸な文章だと思う。
**親のように、妖しくうねる曲線に身をまかすわけでもなく、また、子のように、冷たい幾何学造形にとび込むのでもない。曲線と直線が混じりあい、メタリックな光沢の奥に、妖しい光がほのかににじむ、そんな矛盾がアール・デコの生命。**
(注)親:アール・ヌーヴォー 子:モダニズム
本文でも**アール・ヌーボーからアール・デコへ、という近代の装飾デザインの流れとは、実は、植物的な造形から鉱物的な造形への変化に他ならない、といって大過ないであろう。** と書いている。近代建築史をキッチリ押えた方が一般読者を対象に書いたものだから、ここまで明快に説明できるのだろう。
増田彰久氏の写真もいい。このアングルしかない、このフレーミングしかないと思わせる写真が何カットも掲載されていて勉強になる。
『建築探偵、本を伐る』晶文社 週刊朝日などに掲載した書評をまとめた本。ずばり『芝棟』という本の書評も収録されている。**茅葺屋根の最大の弱点である棟を芝草の根の張りで固め、雨が通らず、かつ風で吹き飛ばされないようにする工夫だという。** と、亘理(わたり)俊次という植物学者の説明を紹介している。
『日本の近代建築』岩波新書はやや硬質な文体で書いている。論文をベースにしたものだろう。昔の写真をよく集めたものだと関心してしまう。
この本を読むと、そうか藤森さんは近代建築史が専門の大学教授なんだと納得する。「藤森教授、ユーモラスな作品や本を楽しみにしています」
今週は藤森さんのファンサイト。