スペインのバルセロナで92年にオリンピックが開催されてからサグラダ・ファミリアと、この大聖堂の設計者である建築家ガウディの名が世界的に知られるところとなった。
『ガウディの伝言』光文社新書の著者、外尾悦郎氏は既に30年近くこのサグラダ・ファミリアで仕事を続けている彫刻家だ。ガウディが生涯を閉じたのは1926年のことだから、1953年生まれの外尾氏はもちろんガウディに直接会っているわけではないのだが、仕事を通じてガウディのメッセージを常に聞き取ってきた方だ。そういう方がガウディと彼の作品を論じた本だから、具体的で説得力があって大変興味深かった。
こんな記述がある。
**自然を言語で捉え、理論や公式を打ち立てていこうとするのが科学者の精神であるとするなら、自然を直感的に捉え、自分の手を信じて、とりあえずものをつくってみようとするのが職人の精神です。**
ものは、知性と感性との統合によって認識されると以前書いたがその捉え方と符合する。この記述を読んで「そうだよね!」と我が意を得たりという感じで読み進んだ。
それにしてもこの大聖堂、建設が始まって既に123年経過したという。一体いつになったら完成するのだろう・・・。
この本には、2020年代の完成を目指していると書いてあるが、本当に完成するんだろうか。
つくり続けていくという人間の営み自体に本当の価値があるのではないか、と著者は指摘している。なるほどそうかもしれない、私はこの指摘に素直に頷けた。
直接体験したことは、やはり深い。読了してそう思った。