透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

また繰り返しの美学

2006-08-30 | B 繰り返しの美学

 

■ パチンコ店の外観は集客の為だろうがとにかく派手なデザインが多い。周りに何もないような郊外にポツンと建っている姿には相当違和感が漂っている。でも、なかなかいいデザインではないか、と思わせるものも中にはある。以前からこのパチンコ店が「繰り返しの美学」の観点から気になっていた。

側壁の9回繰り返されているストライプ、黒と白の境目のところに黒い照明器具がついている。夜景を見たことがないがたぶんきれいだろう。 このデザインにはいままでとり上げてきたものと違うところがある。別に秘密のアッ子ちゃんではないので指摘する。

繰り返しの途中に出入口が付いていることだ。別の要素がくっついてしまうと繰り返しの美学が阻害されてしまうということがこの一例で分かる。この風除室と白いスピーカーがなければもっときれいだっただろうに、なんとも残念だ。 デザイナーもそのことには気がついていたのかもしれないが、駐車場から店内への入り易さを優先したのだろう。

建築の設計には常に相反する条件がついて回る。優先順位は設計者によって異なるが、なかには「美」こそ最優先と考えて機能性を犠牲にする人もいるだろう。特に外観のデザインにはたとえそれが個人の建築であっても周辺環境への責任が伴うことを考え合わせれば、この考え方を否定することも出来ないだろう。

『街並みの美学』という視点の欠如が何をもたらすのか。この国ではその答えの在処が容易に見つかることが残念でならない。