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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

可視化された秩序

2006-09-09 | B 繰り返しの美学


東北学院 中学・高校体育館の妻面の大開口部のサッシの方立

■ 挫屈止めを設けて細くし、更に上下とも端部を絞ってすっきりと納めている。サッシは同一寸法の部材の繰り返し、そこに美を追求するという設計者の姿勢が窺える。

一週間続けて繰り返しの美学をとりあげてきた。そもそも繰り返しの美学とは何だろう・・・。

建築を構成する要素(具体的には建築材料や部品)の建築における位置や寸法、形状、材質あるいは性能を一義的に決める行為として設計を理解することが可能だ。そう、建築はものを秩序づけることによって成立する。

例えば、床にタイルを貼るというのは一枚一枚のタイルの位置を確定する行為と捉えることができる。この、ものを秩序づける行為の結果を視覚的に最も理解しやすく示す状態として、「建築構成要素の繰り返し」があるように思う。

言い換えれば、建築構成要素の規則的な繰り返しに、ものを秩序づける行為の所産としての建築が最もビジュアルに示されているというわけだ。材料の質、例えば強度の均一化も、その行為ではあるが、結果は視覚的には把握できない。

ではなぜ秩序づけられたものに美を感じるのか・・・。認知心理学? このことを解き明かす学問も存在するのかも知れないが、私はこのことを数学で扱う「公理」のようなものと理解するに留める。

秩序づけられたものは美しい、繰り返しの美学はそのことを視覚的に示す代表例


 


美しい架構 

2006-09-09 | A あれこれ考える

 
栗野中学校(栃木県)の体育館

■ 今回の繰り返しの美学の対象は体育館の架構。

大断面集成材のW梁とスチールのテンション材の組み合わせ、いわゆるハイブリッド構造。
基本的には集成材の梁のたわみをテンション材で抑えるという構造。

見た目にすっきりしていて美しい。写っているステージの位置から判断するとアリーナの長手方向に架構している。ロングスパンな架構には構造的な工夫が必要になるが、ここではハイブリッドな構造で見事に解いている。シンプルな架構に設計者の力量が見て取れる。構造的に美しい建築にはウソがない(無理や無駄がなく合理的)。

体育館は設計者の能力(そう、知性と感性)によって感動的に美しい建築にもなり得るし、何の創意も工夫もない凡庸な建築にもなり得る。実にコワイ対象だ。


小谷小学校(長野県)の体育館(再掲)