『建築的思考のゆくえ』王国社 には共感するところが多かった。
「新建築」などの雑誌に寄稿した小論文やエッセイをまとめたもの。
内藤さんは現代建築を、環境との関係を断ち切った宇宙船のようだと批判しているし、建てた瞬間がいちばん美しい建築をつくりたいとは思っていない、とも書いている。このことから、「建築には環境との応答関係が必要である」と「建築は時間の流れの中で育まれる」このふたつの章タイトルに現代建築を批判した内藤さんの建築観が明確に表れている、と理解できる。
「海の博物館」や「安曇野ちひろ美術館」は、内藤さんの建築観が体現された秀作だと思う。今、私がいちばん見学したいのは「牧野富太郎記念館」だ。高知県にあるこの記念館は魚の骨のような架構が美しい。事実この記念館の構想中にヒラメの骨が浮かんだという。
きれいに食べて頭と骨だけになった魚を美しいと思うかどうかは、個人の感性によるだろう。
『建築的思考のゆくえ』は松岡正剛氏の千夜千冊*1にも、とりあげられている(このサイトをご存知でない方は千夜千冊で検索してみてください)。
このサイトで松岡氏は川上弘美の『センセイの鞄』もとりあげている。^^v
*1 千冊(実際には千冊以上)の本の評論。松岡氏の博識ぶりには驚嘆する。