透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

建築的思考のゆくえ

2006-09-18 | A 読書日記


『建築的思考のゆくえ』王国社 には共感するところが多かった。
「新建築」などの雑誌に寄稿した小論文やエッセイをまとめたもの。

内藤さんは現代建築を、環境との関係を断ち切った宇宙船のようだと批判しているし、建てた瞬間がいちばん美しい建築をつくりたいとは思っていない、とも書いている。このことから、「建築には環境との応答関係が必要である」と「建築は時間の流れの中で育まれる」このふたつの章タイトルに現代建築を批判した内藤さんの建築観が明確に表れている、と理解できる。

「海の博物館」や「安曇野ちひろ美術館」は、内藤さんの建築観が体現された秀作だと思う。今、私がいちばん見学したいのは「牧野富太郎記念館」だ。高知県にあるこの記念館は魚の骨のような架構が美しい。事実この記念館の構想中にヒラメの骨が浮かんだという。

きれいに食べて頭と骨だけになった魚を美しいと思うかどうかは、個人の感性によるだろう。

『建築的思考のゆくえ』は松岡正剛氏の千夜千冊*1にも、とりあげられている(このサイトをご存知でない方は千夜千冊で検索してみてください)。

このサイトで松岡氏は川上弘美の『センセイの鞄』もとりあげている。^^v

*1 千冊(実際には千冊以上)の本の評論。松岡氏の博識ぶりには驚嘆する。

私は、おっかなババア

2006-09-18 | A 読書日記

 
派手な装丁、なんだか講談社文庫の雰囲気だけど文春文庫。 

このところケンチクモード全開。ずっと「建築」の話題を続けてきたな、とちょっと反省、って別にいいけど。読書の秋、そろそろブックモードに少し振らないと。ということで『夜のピクニック』に続いて今回はこれ。そう私が好きな室井滋のすっぴん魂。おっと、この表現は曖昧。好きなのはどっち?、ムロイ?すっぴん魂? どっちも好き。だから、好きな(ムロイ+すっぴん魂)。

NHKの連続テレビ小説はみてないけれど、「菊次郎とさき」はよかったな、そう、たけしのおっかさんの役。ああいう雰囲気のシゲルさん、いいとおもうな。前にも書いたと思うけれど、ほんとに「すっぴん魂」な人だと思う。

『すっぴん魂』 週刊誌に連載中のエッセイを再構成したもの。ムロイさんの日常にはなぜか「事件」が頻繁に起こる。銀行でのトラブル、ゴミだしトラブル、旅行先でのハプニング、タクシーの中での出来事・・・。

巻末に佐野史郎さんとの文庫化記念対談が載っている、特別付録で。
この対談が面白い。
**(前略)まあ、ムロイともホント長いつきあいだよね。出会いは、オレが劇団やめて映画始めたばっかりの頃、若かりし竹中直人とムロイとオレと河合美智子と6、7人で芝居やろうって竹中から誘われたのが最初なんだよな**
ふたりのつきあいは、こういうことなのだそうだ。

**年をとるってことは奥深いね。捨てたもんじゃないね。周り見てても、個体差がすごく出て、それまでの生き方がぜんぶ表れて、ひた隠しに隠してたことも表に出てくるじゃない?だから、きっと今の生き方が大事なんだよね。**
いいこというね~、ムロイさん。