運命を分けた設計変更
設計図の描き換え
機械の設計図との違い
勘違い、ミス、失敗、偶然・・・・
またもや設計変更と勘違い
空前の設計変更
S字に込められた意匠
こんな小見出しを列挙すると、建築の本だと思われるでしょうね。人体の進化の歴史を辿った本なんです。
本の帯には**地球史上最大の改造作は、どう生まれ、運命やいかに。「ぼろぼろの設計図」を読む。** とあります。本のタイトルは『人体 失敗の進化史』遠藤秀紀/光文社新書です。
本の話題からしばらく遠ざかっていました。先日読了したこの本の内容を30字以内で要約すると「骨など動物のパーツの形から読み解いた進化の歴史」といったところでしょうか。動物の遺体解剖を繰り返し、進化の歴史を探っている著者はこの本で、人体の進化は行き当たりばったりで、たまたま結果オーライのこともあるけれど、全く失敗なこともあると指摘しています。例えば、第四章 行き詰まった失敗作 には次のような記述がでてきます。
**二本足で歩くための殿筋群、内臓重量や腹圧を受け止める下腹部。狭いながらもバランスをとる足底。精巧な母指対向性。巨大な中枢神経。高度な思考を分担する大脳。少ない赤ん坊を確実に残す繁殖戦略。これらの設計変更はヒトをヒトたらしめる見事な意匠だ。一方で、現代の私たちは、設計変更の負の側面に日々悩まされている。九〇度回転し、垂直になった腹腔がもたらすヘルニア。二本足歩行から起因する腰痛や股関節異常。垂直な血流が引き起こす貧血に冷え性。歩行から解放された前肢が巻き起こす肩こり。**
**ホモ・サピエンスの短い歴史に残されたのは、何度も何度も消しゴムと修正液で描き換えられた、ぼろぼろになった設計図の山だ。** これが著者の見解というか認識。
面白い本でした。で、次は『夜のピクニック』恩田陸/新潮文庫を読む予定。