透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「チューブ」への回帰

2006-12-08 | A あれこれ

 確か川向正人さんとの対談で伊東さんは「中野本町の家」の内部空間 写真①は、諏訪の博物館 写真②でも「まつもと市民芸術館」でもくり返されていると説明していた。そしてそれは自分の内部にある、消しきれない空間なんでしょうね、と続けていた。





昨晩「まつもと市民芸術館」のあわあわな光を眺めながら考えていた。伊東さんが挙げたこの3つの空間に共通するものは一体なんだろう・・・、と。

ようやくそれがチューブだと分かった。チューブとは筒状の形状、構造のこと。端部が開いているか閉じているかは問題にしない。靴下は片方の端部が閉じたチューブ、飛行機は両端が閉じたチューブに翼を付けたものと捉えることができる。そして消化管は典型的なチューブだ。

諏訪の博物館は確かにチューブを横たえた構造だ。「中野本町の家」もU型のチューブと捉えることができるし、「まつもと市民芸術館」のメインホールへのアプローチ空間もなるほど、「中野本町の家」の内部空間と同じU型のチューブと言えなくもない。いや、「まつもと」はJ型か。


「せんだいメディアテーク」 写真③で「チューブ」な柱が有名になったが伊東さんは、実質的なデビュー作の「中野本町の家」で既にチューブな空間を創っていたのだ。


「せんだい」のイメージスケッチ 写真⑤にはチューブのアイデアがメモされているがスチールパイプの組み合わせ、つまり筒状の鋼管トラス構造の他に「鉄板に穴をあけていく」というアイデアも記されている。このアイデアは「MIKIMOTO Ginza2」写真④で具現化されている。この銀座のピンクのビルは内部に柱がないチューブ構造というわけだ。表参道の例のビルは鉄筋コンクリート造のチューブ。そして今世界的な注目を集めている「台中メトロポリタン・オペラハウス」は、洞窟の連続体のような空間と説明されるが、洞窟は典型的なチューブではないか!

ようやく見えてきた。既に指摘したように安藤さんは「表参道ヒルズ」で「住吉の長屋」に帰った。そして伊東さんは透明で薄い建築からチューブな「中野本町の家」に帰っていこうとしているのだ・・・。因みにふたつの住宅は共に1976年の作品。

『中野本町の家』住まいの図書館出版局 こんな本があることは知らなかった。 早速、注文した(注: 「中野本町の家」は既に取り壊されている)。