透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ユニークな発想

2006-12-25 | A あれこれ





駅は駅舎の後方にホームがいくつか並びその上に通路が架かるという空間構成が共通している。「茅野市民館」は大小ふたつのホール、美術館、図書館そしてレストランからなる複合施設だが、駅のホームを建築化したような図書館が特徴だ。

上の写真はホーム上の通路から図書館部分の外観を撮ったもの。図書館がホーム上の通路に直結していて利用者はあたかもホームに降りていくかのように図書館に入ることが出来る。

下の写真は、図書館の内部を撮ったもの。ホームと同様に直線状に長い。一番奥が通路からのエントランス。ゆるやかなスロープ状の床で地上レベルまで下ろしている。円柱のブースはトイレ。

設計者の古谷誠章さんは、現地を訪れて直ちに図書館を駅の通路に直結させようと思ったそうだ。学校帰りの高校生達がホーム上の通路で所在なげに列車を待つ姿を見かけたらしい。そのユニークなアイデアが決め手となってプロポーザルで設計者に選ばれたという(「新建築」05/11)。

プロポーザルやコンペ(両者は明らかに異なるがしばしば曖昧に扱われる)に勝利するには「ひらめき」が必要だ。他の応募者が到底考えつかないようなユニークなアイデア。

伊東さんは「まつもと市民芸術館」のメインホールで、前面の道路側に客席を向けるというアイデアを提示した。応募案の中でそのような提案は他には無かった。普通にプランニングすれば一番奥がステージになり客席は道路に背を向ける。

かつての学校のように「雛型」に倣って設計すればOKという時代は終った。個々のケースごとに独自の解法を示さなくてはならない。設計の苦しみでもあるが楽しみでもある。固定観念にとらわれない自由な発想、脳みそを柔らかく保たなくてはならない・・・。