透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

武士の一分

2006-12-10 | E 週末には映画を観よう

昨日(9日)「硫黄島からの手紙」が封切りされました。「007 カジノ・ロワイヤル」も公開中、そして「トゥモロー・ワールド」も。

山田洋次監督の映画は「寅さん」でもそうですが、「情」とか「絆」をうまく描いていますね。この「武士の一分」もやはりテーマは「情」そして「絆」。

藤沢周平の小説によく登場する海坂藩。藩主の食事の毒見役のキムタク、新之丞が貝の毒にあたって失明してしまいます。それまでの幸せな生活が一変。再び幸せな生活を取り戻すことはできるのか・・・。物語はシンプルですが、これから観る方のために紹介はしないでおきます。

笹野高史さんが実に渋くていいです。キムタクと美しい妻役の檀れい、ふたりの演技を映画での役柄同様にうまくまとめています。

以前S君(知人、友人には頭文字がSの人が何人もいます)から借りた藤沢周平の短篇を朗読したCDでも笹野さんはいい味を出していました。

新之丞が妻の密通を知るのは別の方法で、住まいのセットにはもっと生活のにおいが欲しかった、果し合いのシーンにはもっと迫力が欲しかった、美しい鶴岡の自然が見たかった、時代劇に特有のなんと表現すればいいのか、「深み」かな、それが欲しかった・・・。

挙げていけばいろいろ出てきますが、そのことはこの際置いておいて、なかなかの映画だったと思います。キムタクは時代劇でもキムタク、そのことに拍手です。特に失明してからの彼の目、キムタクファンにはたまらないでしょうね。

藤沢周平の作品は新潮文庫でかなり読みましたが、この映画の原作となった短篇は未読です。文春文庫『隠し剣秋風抄』に収録されている短篇、さっそく読んでみようと思います。

今回はいつもの建築(A)、本(B)ではなくて映画(C)の話題でした。


テンプレート

2006-12-10 | A あれこれ


写真はこの椅子を扱っている会社のHPから転載しました。

20世紀を代表する建築家の一人、ミース・ファン・デル・ローエが1929年にバルセロナ国際博覧会のドイツ館(ミース自身が設計)の為にデザインしたのがバルセロナチェアです。有名な椅子です。デザインが美しく今でも愛用しているファンが多いと聞きます。

ミースは近代建築を代表するふたつの素材、鉄とガラスによって抽象的で美しい建築を創りました。とにかくミースは「美しい」ということを最優先していたかのようです。

そのミースがデザインした「バルセロナチェア」、美しいですね。ミースについては『構造設計の詩法』で佐々木睦朗さんがガウディと共にとり上げている建築家です。伊東さんの「せんだいメディアテーク」を卓越した構造センスによって具現化した佐々木さんが対照的なふたりの建築家をとり上げている。興味深いです。「せんだい」は先日書いたようにミースをガウディが貫いた構造なのですから。

藤森さんが建築家を赤派と白派に分けてみせたということも書きましたが、赤派の祖はル・コルビュジエ、そして白派の祖がこのミースだと説明しています。

前置きが長くなりました。そろそろ雰囲気を変えようとテンプレートを探していたところ、バルセロナチェアを見つけたのです。

「ミース」、ガウディの「バルセロナ」 ブログに書いたばかりでした。「ちょうどいい!」と思ってこのシンプルなデザインのテンプレートにしました。

ま、本当は来年からとか301回目からとか変更のタイミングも考えましたが特に意味もなく昨日変更しました。

ミースは建築より先に家具製作や装飾について勉強したそうですね。佐々木さんの本によると現在のドイツ館は1986年にミースの生誕100年を記念して同じ場所に復元されたものだそうです(そのことは知りませんでした)。

端正で美しいプロポーション、佐々木さんはミースの作品のなかでも最も好きなもの、と書いています。

最近よくとり上げている伊東さんの作品、知的で、すばらしいとは思いますが、私はミースの作品のように「美」をそれほど感じることはありません。それはなぜか・・・機会があれば書こうと思います。