■東京 建築観察記 5
東京 建築観察記 前稿までのまとめ
アンドウ ヒルズ?
安藤さんはショッピングストリートをらせん(スパイラル)状に構成して建築の中に「閉じ込めて」みせた。表参道との関係を断ち切ってしまったのは、残念。だから「表参道ヒルズ」ではなくて「アンドウ ヒルズ」。この建築に相応しい名前だと思うけれど・・・。
日本看護協会ビル:建築と都市の共生
黒川さんは共生という「思想」を縁空間、中間体という概念によって具現化してみせた。向かいの表参道ヒルズに批判的な文章を書いているらしいが、未読。「閉じちゃだめですよ、安藤さん」ということなんだろう。この写真は建築の裏側にまわって撮ったもの。裏通りにこれだけの緑の必要性は感じなかった。既に指摘した通り、この緑は表参道側から見せることを意図したものと理解するのが妥当だろう。壁面の大きなガラス窓はそのためのデザイン。「そうですよね、黒川さん」
一葉記念館
柳澤さんは連子格子という日本の伝統的なボキャブラリー(建築のデザイン要素、文章を構成する単語に相当する)を「現代語訳」して記念館に用い、周辺環境と調和するファサードを創出してみせた。
但し、柳澤さんは竹中時代に「有楽町マリオン」で既に使っている。マリオンは連子格子の現代版とも理解できるかもしれない、と思いついて、そのことに気が付いた。機能的には違うと思うけれど、視覚的な効果という点で一葉記念館の格子もマリオンも同じではないか。
では、都市という文脈で柳澤さんは「有楽町マリオン」をどのように位置付け、そこでマリオンをどのようなデザイン的な意図で使ったのだろう・・・。当時の雑誌が見つかれば確認してみたい。
建築家の難波和彦さんは以前雑誌で**実現した建築の説明では、プロセスはあたかも必然的な経過を経て最終的なデザインに到達したかのように記述される、しかしデザインは決定論的なプロセスではない。**と指摘していた。
そうなのだ、先に最終的なデザインがイメージされて、それにあとから理屈や説明をつける場合だってあり得る、むしろその方が一般的なのかもしれない。デザインは結果から遡るという過程をとるのだ。菊竹さんのスカイハウスでそのことに少し触れたが、もしかしたら柳澤さんの場合も格子が先にイメージされて、そのデザインにあとから必然的な理由を与えたのかもしれない・・・。