『寅さん大全』筑摩書房(1993年初版発行)寅さん、若い!
新聞のテレビ欄は必ずチェックするがラジオ欄をチェックすることはまずない。偶然、仕事帰りに車の中で「わが人生に乾杯!」(NHK第1)を聴いた。
「映画監督の一分」そう、ゲストは山田洋次監督。ホスト役の山本晋也カントク、アシスタントの城之内早苗さんと山田監督の映画談議。番組の途中で自宅に着いてしまったが、続きを居間で聴いた。
山田監督は子供のころ「路傍の石」を映画館で観たそうで、そのとき一緒に行った二十歳前のお手伝いさんが隣でぼろぼろ涙を流しているのをみて、映画というものを意識するようになったそうだ。
私の場合、寅さん映画以外で特に印象に残っている作品は「幸福の黄色いハンカチ」、番組でも話題になった。ヤクザ映画のスターだった健さんの転機となった作品。すごい数の黄色いハンカチが風になびいているラストシーンが忘れられない。
「武士の一分」では監督も失明してからのキムタクの目がよかったと言っていた。キムタクは自分は目が見えないのだと暗示をかけていたそうだ。
番組の後半の話題は寅さんだった。山本カントクはとにかく寅さん映画に詳しい。第7作のポスターにはSLが写っていると指摘していたが、確かに写っている(「寅さん大全」で確認)。
旧満州で育った山田監督は、内地はどんなところだろうといつも思っていたそうで、それが日本全国を旅する寅さん映画をつくろうとした契機だと語っていた。番組の最後に山田監督は「道は最初からあるのではない、歩いた跡が道になるのだ」と山本カントクの問いに答えていた。これは魯迅のことばだそうだ。
NHK衛星放送であと数作(4作かな)寅さんをやる。見逃さないようにしよう。