透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

符合

2006-12-09 | A 読書日記


伊東さんが「ガウディを目ざす」と何かの席で言った・・・。藤森さんの本でそのことを知ったと前稿に書きました。

そういえば伊東さんのパートナーで構造家の佐々木睦朗さんも『構造設計の詩法』住まいの図書館出版局 で最初にガウディをとり上げていました。

ガウディか・・・

偶々手元にあった『不思議な建築 甦ったガウディ』下村純一/講談社現代新書 をぱらぱらと見ていると・・・

**人工の丘に地下鉄のコンクリート・チューブが滑り込む**
**ホームの構造を並木に見たてたクロールのスケッチ**
写真やスケッチにこんな説明がつけられています。

目次を見ると
第一章 自然と生物  
第二章 洞穴 
第三章 肉体 
第四章 樹木  
第五章 物の魂 などとあります。

このまま伊東さんの本の目次に使えそうです。
伊東さんは「新しいリアル展」に際して 現代建築に物質(もの)の力を回復するために というタイトルで文章を書いています。その点で第五章の「物の魂」というタイトルは伊東さんのこれからの方向性を表現しているかのようです。

ガウディは建築の構造や形を自然から直接学び、自然の美や合理性を建築に再構成しました。そして伊東さんはピューター・テクノロジーを駆使して自然に近い建築を創造しようとしているのでしょう。

静的で幾何学的な造形で自然との際立った対比を生み出した近代建築から自然への回帰を目指す新しい建築。 ガウディとは全く違う方法によるアプローチ、でも到達点は案外近接しているのかも知れない、そう思います。

伊東さんは**藤森さん、教えて下さい。近代建築の矛盾を見てしまった建築家に、でも頼るべき田舎も自然も無いことを知ってしまった建築家に、この先あるべき建築を・・・・・。**と問いかけました(『ザ・藤森建築』)。

その問いかけに対する自分なりの回答を見いだし、その方向に向って歩き出した。そしてその到達点を「台中」で早くも提示しようとしている。伊東さん、このような理解でOKでしょうか・・・。


チューブな建築(前稿のつづき)

2006-12-09 | A あれこれ

前稿を補っておく。

チューブな建築で最も有名なもの、といえばガウディの「サグラダ・ファミリア大聖堂」だろう。バルセロナでオリンピックが開催されてから、町のシンボルはすっかり有名になった。

しばらく前にとり上げた『ザ・藤森照信』を再読していて**伊東さんが「ガウディを目ざす」と何かの席で言った時には周りが驚いていた。**と藤森さんが書いていることに気が付いた。

この発言がどんな文脈でなされたのか分からないので勝手に都合よく「やはり伊東さんはチューブを究めようとしているのだ」と解釈する。

「せんだい」はミースな空間(抽象的なキューブ)をガウディなチューブ(有機的な筒)が貫いているとも捉えることができる。

藤森さんは建築家を物の実在性を求める赤派と抽象性を求める白派とにスパッと分けてみせた。この表現を借りれば「せんだい」は白いキューブを赤いチューブが貫いているともとれる。面白い。実際はチューブの色は白だけど。

『住宅の射程』で伊東さんは、「せんだいメディアテーク」では垂直方向にだけチューブと呼ばれる空間があったが、「エマージンググリッド」(ゲント市文化フォーラムのコンペで初めて考え出され、台中メトロポリタンオペラハウスの空間構成システムとして採用されている)はチューブが水平方向にも垂直方向にも連続したものだと説明している。

建築の最先端を行く伊東さんは、キューブな20世紀から抜け出して、チューブな21世紀を創ろうとしているのかもしれない、ガウディの時代には無かったコンピュター・テクノロジーによって。