透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

年越し本

2006-12-24 | A 読書日記



今年もあと一週間。午前中、書店に出かけた。年内に読み終えることが出来なければ、「年越し本」となる本を探す。

吉村昭さんの遺作短篇集『死顔』はモノトーンの静かな装丁、読みたい一冊。吉村さんの作品は何作も読んだが、中公文庫はいままでほとんど手にしなかった。『秋の街』、誠実な人柄が滲み出る吉村さんの小説は年末に相応しいだろう。

絲山秋子さんの作品が文庫になった。『海の仙人』、初めての新潮文庫だから背表紙の色は白。2冊目が出るときに絲山さんの希望も考慮して決められることになるだろう。彼女がユニークなキャラ、ということは『絲的メイソウ』というエッセイ集から分かるが、どんな色に決まるだろう。

『美しい都市 醜い都市 現代風景論』五十嵐太郎/中公新書 
帯の「カオスか秩序か」が気になって手にした。ぱらぱら頁をめくって芦原義信の『東京の美学-混沌と秩序』岩波新書をとり上げていることを知った。このところ都市の景観についてときどき考える。

他にも『フェイク』楡周平/角川文庫 など気になる本は何冊かあったが、結局購入したのは写真の3冊。

『空海の風景 上、下』司馬遼太郎/中公文庫 をようやく読み終えたがクリスマスに空海はないだろう、後日書きたい。 

 


「真鶴」 再び

2006-12-24 | A 読書日記

  Merry Chirstmas        

**締め切りの直前まで書かないでおいて、何日かでわーって書くこともあるんですけどね。今回は同じペースで書いては消し、これという言葉が見つかるまで手触りを確かめつつ書いていきました。**

週刊ポストの「著者に訊け」というコーナーで『真鶴』(以前書いたので内容は省略する(06/11/11))について著者の川上弘美さんがインタビューにこう答えていた。確かにこの作品には川上さんの今までの作品とは異なる雰囲気が漂っている。ひらがなの多用、句読点の多用もその要因だろう。

今朝の週刊ブックレビュー(NHK衛星第2 朝8時から)の書評コーナーでこの本がとり上げられた。今回の書評ゲストは編集者の松田哲夫さん、作家の吉川潮さん、翻訳家の鴻巣友季子さんの3人。

不思議なとしか表現のしようのない読後感、真鶴という絶妙な場所の選定、川上さんしか表現できない言葉の魔術、昼でも夜でもないような時間をゆっくりたどって行く、微妙な心の狭間を行ったり来たりする、ことばと表現と物語が渾然一体となっている、ことばが柔らかいが強い・・・。

書評ゲストのコメントを書き並べると、この小説の独特な雰囲気が少しは伝わるかもしれない。

「存在と不在のあわいを描いた作品」(推薦した鴻巣さんのこのコメントに同感)、今年一番の収穫はこの作品の読者になったことだ。



『真鶴』川上弘美/文藝春秋