透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

路上観察 諏訪の民家

2008-03-16 | A あれこれ


■ 久しぶりの路上観察(20080315)。

昨日所用で諏訪に出かけた。諏訪地方にはこのように一つ屋根の下に蔵と住宅を一体に造った「建てぐるみ」が今でも残っている。残念ながら蔵の外壁が傷んでいて妻側は波トタンを張ってしまっているが平側(写真の左側の面、暗くて分かりにくいが)は板張りのままだ。

若かりし頃は民家を訪ねて全国あちこち出かけたものだ。最近はその機会がなくなってしまったが民家を見かけると反応する。破風板を×状に交叉させるのもこの地方の民家の特徴。以前も書いたが板の小口は腐りやすい。そこで小口を塞ぐために別の板を付けて下のように「すずめおどり」とよばれる菱形の妻飾りとしたものもある。

屋根を地元で採れる鉄平石で葺くのもこの地方の民家の特徴。「地産地消」が民家の基本だ(地元産の材料を生かすという意味で「地産地生」という表現を見たこともある)。



この写真は1979年の撮影、当時はまだこのような立派な民家が数多く残っていたが最近ではあまり見かけなくなってしまった・・・。

「建てぐるみ」「すずめおどり」「鉄平石一文字葺き」「妻だれ」 

諏訪地方の民家の特徴はこの4点。

「乳と卵」 少し改稿

2008-03-16 | A 読書日記



 『乳と卵』川上未映子/文藝春秋 

カバーデザインが女性の体のラインを描いていることはなんとなく分かったけれど、左の写真のように見ているとそれが具体的にどの部位を描いたものなのかは判然としない。カバーを本体から外して逆さにしてみて初めて(右)痩せた女性の後ろ姿であることが分かった(違うかな)。

タイトルの『乳と卵』は女性に特有、固有(この場合どちらが適切だろう)なふたつのことばを表している。豊胸手術を受けるるために大阪から妹を訪ねて上京してきた母親巻子の「乳」。初潮をこれから迎える娘緑子の「卵」。

川上未映子さんの「わたくし率イン歯ー、または世界」も前回の芥川賞候補になったのだが『アサッテの人』に受賞作が決まった。石原慎太郎さんは前回作について**自分が苦労?して書いた作品を表象する題名も付けられぬ者にどんな文章が書けるものかと思わざるをえない。**と酷評していた。

で、今回の受賞作の『乳と卵』というタイトルは前述したように内容を表象している。だから石原さんがどのような書評をしたのだろうと、文藝春秋を手にしてみると今回もこの受賞作を酷評していた。評価は選考委員それぞれ違って当然だが・・・。

この小説は大阪弁を交えたライブなはなし言葉で書かれていて、ひとつの文章が随分長く読点で繋がっている。最初は読みにくいが慣れるとリアルにイメージが立ち上がってくる。この作家の個性なのであろう。

小説のラスト、母娘は冷蔵庫から玉子を取り出して次々に頭で割っていく。そのシーンは圧巻、秀逸。この場面を読んで母親思いの緑子(そう、緑は豊胸しようとしている母親のことを実は心配している)がなぜかがかわいそうで仕方なかった。なぜかわいそうと思ったのだろう・・・、どうも私には小説を暗く読む癖があるようだ。

この作家のこれからの作品にも注目。ふたりの川上か・・・。