透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

引用

2008-03-02 | A あれこれ




 今回引いたカードは石井和紘さんの「同世代の橋」(横浜の店舗+住居)だった。作品名の通り石井さんと同世代の建築家の作品からの「引用」によってファサードを埋めている。 右のカードは石山さんの幻庵だが、この作品が4階部分にある。他に安藤さん、伊東さん、六角さん、高松さんらの作品が引用されている。この作品については「寛大な発注者だったのかもしれない」この一言で片付ける。

幻庵が何故黄緑色なんだろう・・・、今まで気がつかなかったが、クラブ(三つ葉)のカードのイラストはこの色で統一されている。

この「同世代の橋」を見て『普請の顛末』柏木博、中村好文/岩波書店を思い出した。この本にはデザイン史家の柏木博さんの自邸の設計から完成までのプロセスでの様々な出来事の記録が納められていて興味深い。

この住宅にも近代建築史に載る名作からの「引用」が試みられている。アアルト、カーン、コルビュジエ、ミース、村野、アスプルンド、スカルパ、吉村から9つの「引用」。

同世代の橋とこの住宅は他の作品からの「引用」を試みているという点で共通している。石井さんの作品は妙に理屈っぽく感じるが真摯に建築した結果だとは思えない・・・、もちろん私の印象に過ぎないのだが。

一方、中村好文さん設計の住宅の場合は、柏木博さんがデザイン史の専門家であることを意識したユーモアのセンスに富んだ「遊び」が、デザイン的にも手堅くまとまっていて美しい。

共に「引用」という手法を採っているのだが、何故このように作品から受ける印象が違うのか自分でもよく分からない・・・。

伊東忠太 再び

2008-03-02 | A あれこれ



 「伊東忠太が70年ぶりに新作」 雑誌「住宅特集」の3月号載っていた記事の見出しに気が付いた。

静岡県袋井市に可睡斎という家康ゆかりのお寺があるそうだが、境内の一角に建っている護国塔が伊東忠太の設計だという。お寺のサイトにこの護国塔の写真が載っている。

http://www.kasuisai.or.jp/

なるほどカードの伊東が頭に載せている塔と似たデザインだ。築地本願寺もインド風のデザインだが、この塔も五重塔のルーツといわれるインドのストゥーパに似た形をしている。この塔は伊東がアジア・欧米建築行脚から帰国した翌年(1906年)に設計を依頼され、1911年に完成したそうだ。

この寺の山門も伊東が1935年に設計しているそうで、その設計図が発見されたとのことだ。 この山門が住職の熱意で70年の時を経て建設されているという。

この記事を読んで24才で夭折した詩人立原道造が計画したヒアシンスハウスのことを思い出した。残っていたスケッチを基にして実施設計がなされ、さいたま市営別所沼公園内に建設された週末住宅だが、こちらもほぼ70年の時を経て造られた。

この国では建築の設計期間も工事期間もきわめて短くて短期間で完成させてしまうが、必ずしも歓迎すべきことではない。このような出来事を知ると嬉しく思う。




 


2月の本たち、再登場。

2008-03-02 | A ブックレビュー
 

■ 3月になった。もう♪どこかで春が生まれてる~、のかも知れないが、その気配すら感じない。

本たちの記念写真のアップ。左の写真に写っているのが2月に読んだ本たち、ただし『中村屋のボース』は読書中。右の写真は2月に透明タペストリーに織り込んだ本たち。こたつの上に積み上げて撮った。

オーバーフロー状態の書棚を少し整理しないと・・・。