■ 今回引いたカードは石井和紘さんの「同世代の橋」(横浜の店舗+住居)だった。作品名の通り石井さんと同世代の建築家の作品からの「引用」によってファサードを埋めている。 右のカードは石山さんの幻庵だが、この作品が4階部分にある。他に安藤さん、伊東さん、六角さん、高松さんらの作品が引用されている。この作品については「寛大な発注者だったのかもしれない」この一言で片付ける。
幻庵が何故黄緑色なんだろう・・・、今まで気がつかなかったが、クラブ(三つ葉)のカードのイラストはこの色で統一されている。
この「同世代の橋」を見て『普請の顛末』柏木博、中村好文/岩波書店を思い出した。この本にはデザイン史家の柏木博さんの自邸の設計から完成までのプロセスでの様々な出来事の記録が納められていて興味深い。
この住宅にも近代建築史に載る名作からの「引用」が試みられている。アアルト、カーン、コルビュジエ、ミース、村野、アスプルンド、スカルパ、吉村から9つの「引用」。
同世代の橋とこの住宅は他の作品からの「引用」を試みているという点で共通している。石井さんの作品は妙に理屈っぽく感じるが真摯に建築した結果だとは思えない・・・、もちろん私の印象に過ぎないのだが。
一方、中村好文さん設計の住宅の場合は、柏木博さんがデザイン史の専門家であることを意識したユーモアのセンスに富んだ「遊び」が、デザイン的にも手堅くまとまっていて美しい。
共に「引用」という手法を採っているのだが、何故このように作品から受ける印象が違うのか自分でもよく分からない・・・。