■ 食の海外依存からの脱却の鍵、それはコメを主食とする食生活に戻すことだ。
少しコメに関する本を読んでみようと書店にでかけて『コメを選んだ日本の歴史』原田信男/文春新書 を見つけた。著者はコメとの関わりから日本の古代から現代に至るまでの通史を概観している。
本書を読んでコメがその時代の政治や経済、文化と深く関わってきたことを再認識した。著者は長年の研究成果をベースに本書を書いており、とにかく内容が充実している。日本で栽培されているコメ(温帯ジャポニカ)は7000年前の中国長江下流域にまでルーツを遡ることが出来るという。連綿と続いている日本とコメとの関わりを膨大な資料を基に論考しているが、ひとりでその歴史をまとめるのは大変な作業だったに違いない。
今日では食の多様化が進みコメの消費が年々減少してムギの消費(パンやパスタとして)は逆に増加しているのだが、日本の気候はムギの栽培には不向きだという。ムギは現在90%以上を輸入に頼っているが、やはり湿潤な日本に適したコメ中心の食生活にシフトすることが食料の自給率の回復のポイントだろうと繰り返して書く。
ところで本書によると**鴎外は、コメに長く慣れ親しんできた日本人の食習慣を変更することの不合理性や、日本の食糧事情からする穀類や肉の輸入に対して、外国依存の危険性を指摘している。**そうだ。そうか、鴎外は既に明治時代に今日のような状況に対して警鐘を鳴らしていたのだ。
この40年間で1日5杯位食べていたご飯が2杯位までに減っている(極大雑把に捉えて)、3食ともご飯という食生活に戻ることができるだろうか、私は残念ながら無理だと思う。仮に将来そうなったとしてコメを国内生産だけで賄うことが出来る生産体制がそれまで持続しているだろうか・・・。
やはり日本の食生活の危うさは変わらない、と思う。