透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

休日のひととき

2008-04-06 | A あれこれ


■ カフェ・シュトラッセ。春の陽が室内に柔らかく射し込み漆喰の壁がそれに応えている。やはり自然素材の室内は心地良い。ここで『終らない旅』小田実/新潮社 を1時間ほど集中して読む。恋愛小説だが、そこは小田実、ベトナム戦争のことなどを織り込みながら物語を展開させていく。ベトナムで20年ぶりに運命の再会をしたふたり、どんなエンディングを迎えるのだろう・・・。

この作家のことをしばらく前にNHK教育テレビで特集していた。病室にカメラが入って取材、時には廊下からドアのガラス越しに病室内の様子を伝えていた。小田実は病に伏しながらこの国の行く末を心配していた。「富国強兵などしなければよかった・・・」実に悲しげな顔で語っていたのが印象的だった。



カフェに置いてある新聞の広告で川上弘美の新刊『風花』を知った。『真鶴』からもうだいぶ経っている。小田実から川上弘美へ、すごい落差・・・、でもこれが私の読書。

照明について考えるの巻

2008-04-06 | A あれこれ



■ 建築家で映画評論家でもある渡辺武信さんは、中公新書で住まいに関する三部作を著しました(写真左)。その後更に『住まいのつくり方』が加わりました。

渡辺さんの友人だという和田誠さんの挿絵付きのこれらの本は著者自身の説明によると**住まいのソフトとでも言うべき〝住まい方〟は一つの思想であり、それはしばしばハードである建物=住まいよりも重要だ**ということを述べたものです。映画の話題を盛り込んだこれらの本はどれもエッセイ風に綴られていて楽しく読むことができます。

最初に出版された『住まい方の思想』1983年 が建築のハードについて最も多く論述しています。その第9章の「照明」についてで、渡辺さんは**映画を見る時に、ちょっと気をつけていると解るのだが、天井からの照明にたよっている例は稀で、居間では各種のフロア・スタンド、食堂では卓上のランプや蝋燭が照明の基本である。つまり、照明計画とは、既に決められた単一光源のためにカッコいい照明器具を選択するなどという単純なことではなく、複数の光源の位置と種類を決めていくことなのだ。** と指摘しています。

先日ある建築の竣工写真がメールで届きました。写真家にはそれぞれ得意なジャンルがありますが、竣工写真は建築写真を専門とする写真家によって撮られます。届いた写真を見て、照明によって空間の雰囲気が随分変化するということを改めて感じました。

照明についてはJISによって照度基準が示されていますが、それは単に明るさの推奨値を示したものに過ぎません。設計者がどこまで照明の重要性を認識しているか、によって夜の空間の質が決まります。先の建築の設計者はこの辺をきちんと押えていることが分かりました。いくつかの照明パターンの選択ができるように設計されています。

ところで肉屋のショーケースに並んでいる肉は実にいい色をしていますが、それは照明の効果によるもの、肉の色がきれいに見えるような光源を使っているからなんですね。自宅の台所でひろげてみて、あららと思った経験、ありませんか?蛍光灯の下ではあまり美味そうな色にはならないはずです。照明のこのようなことも考慮する必要があるといえるでしょう。

空間の演出装置としての側面も見逃せません。暖かい家庭的な雰囲気を醸し出す照明器具として例えばダイニングテーブルの上にはコードペンダントが欠かせない、そう思います。

カフェなどのテーブルにも同様の理由によってコードペンダントが欲しいです。もちろん好みにもよると思いますが。最近ときどき利用する「カフェ・シュトラッセ」の照明は天井や壁から吊るされた裸電球、夜の雰囲気は未だ体験していません。そのうち夜出かけてみます。と、続けていけばきりがありません、今回はこの辺で。 

追記 カフェなどで待ち合わせする場合、(別にカフェに限りませんが)照明や窓の位置を考えて、つまりどの方向から光が顔にあたるか考えて席を選択することを特に女性の方にはおすすめします。尤も席の選択には他に優先すべき条件があるでしょうが・・・。