山形村下竹田の今は無き火の見櫓 撮影 201104
■ 火の見櫓観賞、いや火の見櫓はアートですから鑑賞とすべきでしょうか。
鑑賞のポイントは櫓のプロポーションと脚の美しさです。桜を纏っていますが櫓の形はよく分かります。実になめらかな曲線を描いて上方に向かって細くなっています。
逓減率(最下段の横架材と見張り台直下の横架材の長さの比としました)を調べると約0.4。多重塔(三重塔、五重塔)ではこの逓減率の値がどのくらいのときにどんな印象になるかという研究がなされています。工学的な研究では定量化、数値化が欠かせませんから。
火の見櫓について櫓の高さ・逓減率と見た目の印象との関係について明らかにしようと思うなら、何人かに聞き取り調査をする必要があるでしょう。そうすればある傾向が見つかるでしょう。
次に脚の形に注目します。トラスが脚の先まできちんと伸びています。脚上部(って股間部のことですが)のアーチも大きさが適当でお手本のような美脚です。ウォーキングでもラジオ体操でも欠かさず続けることが大切なんですが、これは何に対しても当て嵌まることでしょう。火の見櫓鑑賞も例外ではありません。評価は共に★★★★★です。
この火の見櫓は文句なしに美しいです。あえて難を挙げるとすれば屋根の反りがきついことと、軒先の鼻かくし(建築用語)のひらひらでしょうか。私はもっと渋く、地味な方が好きです。
残念なことにこの火の見櫓も桜の木も今年4月に撤去・処分されてしまいました。田舎の風景とて魅力をつくるのは「歴史の重層性」、古いものと新しいものとの秩序ある調和だと考えていますから、この火の見櫓の撤去・処分は残念なことと言わなければなりません。