■ 星新一の『つぎはぎプラネット』新潮文庫を読み終えた。
**「ところできみ、ビデオコーダーと電子計算機を連結した、分類保存機といったものができると、さらに便利なのだがな。必要な項目のボタンを押す。すると、一瞬のうちに、これのうつっているテープのその部分が取り出され、画面にでてくるというわけだ。つまり、ビデオテープの百科事典というべき装置のわけだ・・・・・・」**(281頁)
「ビデオコーダーがいっぱい」というこのショートショートが発表されたのは1965年。ここにインターネットに通じる概念が示されている。これは驚き。
**なにもかも本社のビルに集めるのは時代おくれ。通信装置の発達で、本社と緊密に連絡がとれていれば、分室がいかにはなれていようと事務に支障はない。
いかなる書類も連絡ひとつで、本社のファイルから電送によって瞬時に手に入る。ビルのなかを歩きまわるより、このほうがはるかに能率的だ。**(347頁)
これなどは、現代の電子メールでのやり取りそのもの。「おとぎの電子生活」という、1967年に発表された作品に描かれている。そのころ、電子メールは実験的な試みに留まっていて、一般には知られていなかった。星新一がその試みを知っていたのかどうか。
上の文章に続けて**もっとも、部長会議や課長会議は本社で開かれることになっている。やはり、なま身の人間が顔をつきあわせる必要もあるのである。** と書いている。この指摘は鋭い。
未来を的確に予想し、平易で簡潔な文章で表現している。さすが星新一。