透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

安曇野市新本庁舎

2015-02-14 | A あれこれ









 安曇野市の新本庁舎が今年(2015年)1月に竣工して、先日見学会が開催されたので参加した。この庁舎については公開で行われた設計プロポーザルのプレゼンを聴いたこともあり、注目していた。設計・監理はプロポーザルで選ばれた内藤 廣さんのチームが担当した。

新本庁舎の特徴を外装にも内装にも木が多用されていることだと理解した。外装に安曇野市の市有林のヒノキの間伐材が使われていて、外観上の特徴になっている(写真上)。

内装では壁と天井にカラマツ材が使われている(写真中)。他の内装材は種類も色も限定的で、床は茶色のカーペット、執務室などの天井は岩綿吸音板、加えてプレキャストコンクリートの柱と梁は仕上げ無し(写真下)。白い壁はクロスと化粧ケイカル板など、あとは黒く塗装されたスチールとレンガ色のサインプレートだけ。材料の素材感がストレートに表現された空間になっている。

厚化粧どころか薄化粧すらしていないすっぴんの美しさ、心地よさ。内藤さんが唱える「素形の美」がどのような概念なのか理解していないが、あるいはこのようなすっぴん仕上げのことも指しているのかもしれない。

クライアントから「質実剛健」というコンセプトが提示され、内藤さんらがそれに応えて実現した新本庁舎。 内藤さんの建築は例えば渋谷のギャラリーTOMや三重の海の博物館、安曇野ちひろ美術館、それから十日町情報館や高知駅、旭川駅は写真でしか見ていないが構造と意匠が不可分な関係で成立している。

建築についてはいろんな考え方があるが、この庁舎はもの(建築構成要素)をなるべくシンプルなルールで秩序だてることで魅力的な建築になっている。構成要素の複雑な関係をいかに単純化するか、このような判断というか価値観で設計がなされていると見た。

これは建築生産という面からも理にかなった考え方であり、従ってコストダウンにもつながる。「質実剛健」という設計課題に対する明快な答えが示された建築だ。