■ 今年の8月に亡くなった阿川弘之氏の『春の城』/新潮文庫の再読を始めた。
この長編小説の刊行は1952年(昭和27年)、文庫化は1955年。12年前(2003年)に買い求めて読んでいる。このカバーデザインは今風だが、60年以上も前の作品。読売文学賞受賞作。
**「在学三年の諸君とはこれでお別れでありまして、諸君はその十六七年の長きに及んだ学生生活を了えて、ここに新しく社会への首途(かどで)をされる訳でありますが、国の情勢は諸君に必ずしも華やかなる前途を許さず、大部分の方は直ちに軍に服して征戦の事に従われるものと思います。私は諸君と訣別するに当たって、言うべき言葉を知らない者でありますが、ここに北宋正学の先駆、范文正公の岳陽楼記の一節を高唱し、以て諸君の恐らくは苦難の多い前途に対し、ささやかながら餞(はなむけ)の言葉としたいと思います。」**(44頁)
学徒出陣。想いを寄せている女性が暮らす故郷・広島に原爆が投下された・・・。
激動の時代を主人公の青年はどう生きたのか、じっくり読みたい。