『葭の随から』 阿川弘之/文春文庫
■ 長編小説『春の城』に続き、やはり阿川弘之氏のエッセイ集『葭の随から』を読む。
書店に行けば読んでみたいと思う作品が何作も見つかる。でも、このところ昔読んだ作品の再読をしている。いわゆる流行作家の作品ももちろんいいけれど、やはり長年読み継がれてきた作品がいい。
ああ、こんな折り目正しい文章が書けたらなあ。いやいや、ないものねだりはよそう・・・。
『葭の随から』 阿川弘之/文春文庫
■ 長編小説『春の城』に続き、やはり阿川弘之氏のエッセイ集『葭の随から』を読む。
書店に行けば読んでみたいと思う作品が何作も見つかる。でも、このところ昔読んだ作品の再読をしている。いわゆる流行作家の作品ももちろんいいけれど、やはり長年読み継がれてきた作品がいい。
ああ、こんな折り目正しい文章が書けたらなあ。いやいや、ないものねだりはよそう・・・。
■ 物語の終盤に原爆が投下された広島の惨状が描かれている。主人公の小畑耕二が故郷広島に帰ってくるのを待ち続けていた伊吹智恵子は被爆して命を落とす。
**智恵子ら親子は当分の間、此処で生活することになったが、智恵子はその夜痛みを訴えてよく眠らず、そして翌日からは非常な苦しみが始まった。(中略) 父は宮島沿線に疎開している友人の医者を迎えに行ったが、二里の道を歩いて診察に来た医者も、殆ど手の下しようが無いらしく見受けられた。**(308頁)
**「小畑君に逢いたいか?」父親はかが込んで訊ねた。智恵子は首を横に向けて、こっくりをした。**(310頁)
8月13日、何とも悲しい智恵子の最期。父親はその時何を想ったのだろう・・・。この場面を読んで涙ぐんでしまった。加齢とともにますます涙もろくなって・・・。
今もテロや戦争による悲劇が世界各地で起こっている。ああ、悲しい現実・・・。