透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

『「松本清張」で読む昭和史』を読む

2019-12-29 | A 読書日記

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 『「松本清張」で読む昭和史』原 武史(NHK出版新書・2019)を一気読みした。松本清張の作品から社会状況を読み解く、という試み。

本書で取り上げている作品は第一章「点と線」、第二章「砂の器」、第三章「日本の黒い霧」、第四章「昭和史発掘」、それから第五章「神々の乱心」。

「神々の乱心」は清張の未完の遺作で、第五章で著者の原さんは、結末のシナリオを予想している。天皇制、宮中の闇を(暗示的に)扱ったこの作品を読んだときは内容そのものが信じがたく、すんなり受け入れることができなかった。だから、原さんが示した結末予想も奇想としか思えなかった。

類書は今までも読んできたが、これからも松本清張の作品はもちろん、作品論も読み続けたい。

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「火の見櫓の上の海」読了

2019-12-29 | A 読書日記

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 年越し本になるかな、と思っていた『火の見櫓の上の海 東京から房総へ』川本三郎(NTT出版1995)を読み終えた。本書はサブタイトルが示すように、東京から房総への紀行文学で、何人もの作家のエピソードを織り交ぜながら房総の魅力を綴っている。

書名について著者の川本さんはあとがきで**画家の谷内六郎の言葉「上総の町は貨車の列 火の見の高さに海がある」からとっている。**と明かしている。房総半島は低い山が海のすぐ近くまで迫っているところが多く、町が狭い傾斜地に出来ているために、「火の見の高さに海がある」ということになるという。

海沿いの火の見櫓、そう、灯台のように立つ火の見櫓を見たいものだと前から思っている。この本には房総の風景を写した何枚もの写真が載っているが、残念ながらその中に火の見櫓が写っているものは無かった。「海の上の火の見櫓」がテーマではないのだから、仕方が無いが。

房総に「海の上の火の見櫓」は無いだろうか。房総でなくてもよいが、どこかにこのような火の見櫓があるのなら、見に行きたい。知多半島辺りにはありそうだが・・・。


本稿から取り上げる本の出版年も示し、今までと表記を変える。