透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「日本人はどう住まうべきか?」

2019-12-27 | A 読書日記



 このところ読むのは専ら新書だが、先日久しぶりに文庫のコーナーを覘き、この本を見つけた。『日本人はどう住まうべきか?』養老猛司・隈研吾/新潮文庫(2016)。両氏の建築「放談」を収録している。

** (前略)すべてのテナントからきちんと家賃を取らなきゃいけないわけです。最低家賃×平米数で、月々上がる利益をサラリーマンは必死に計算します。でも、そうやって計算を積み上げると、家賃が高くなって、なかなか普通の店は入居できなくなる。入居できたとしても、長期的に商売ができるところは少なくて、短期的に成り立てばいいようなショールームやアンテナショップがほとんど。(中略)何年か後には撤退するような店しかないわけです。それでは楽しく歩ける街ができるわけがないですよね。**(92頁)

** アメリカでは超高層ビルの足元に花屋さんがよくあるんです。家賃をものすごく安く抑えて、1階に入ってきてもらうわけです。(後略)**
**養老 確実に花を飾ってくれて、しかも自分でメンテナンスもしてくれるでしょう。そんなにいい並木はないよね。**
** 要するに人間付き緑地ですよね。で、アメリカ人はコーヒーショップも同じように考えるんです。コーヒーショップは街に楽しい雰囲気を作ってくれるんだから、家賃を取っちゃダメだ、と。実際に、そういう店を低層部にうまく配置するだけで、街全体のイメージはガラッと変わります。**(93頁)

ふたりのこんなやり取りを読むと、なるほどな、と思う。

確かにビルの足元が街路に対して開いていないと、よそよそしい雰囲気が漂い、街歩きを楽しもうなどという気持ちにはならない。それと反対に通りに開いていると、隈さんが指摘しているように街歩きが楽しい。極端な例だが、浅草の仲見世通りが賑わうのは、それぞれの店が通りに開いていて歩くのが楽しいから。地元松本だと縄手通り。

これに関連することを既に書いている(過去ログ)。

建築や都市について縦横に語り合うふたり。飲みながら(でなくてもいいけれど)このような語らいを楽しみたいものだ。