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『日本アパッチ族』小松左京(角川文庫1971年)
■ 小松左京の作品で一番印象に残っているのは『日本沈没』だ。あの作品は日本という国を失った時、日本人はどう生き延びるかをテーマにした壮大な思考実験だった。読者にアイデンティティを問うた、と言ってもいい。カッパ・ノベルスで読んだが、今は手元に無い。
『日本アパッチ族』は鉄を食べて生きている食鉄人種・アパッチたちの物語。荒唐無稽な物語ではあるが、戦後日本が選択したかもしれな別の社会の可能性を示して見せている。再軍備、理不尽な法律・・・。
『日本沈没』同様、小松左京は自身の思考実験を実におもしろい小説に仕立て上げている。さすがとしか言いようがない。
手元にある最も古い部類に入る1冊