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■ 「ぼくはこんな本を読んできた」、今回は『日本百名山』深田久弥(新潮文庫1995年31刷)。深田久弥は本書の後記に百名山の選定基準について品格、歴史、個性の三つを示している。そして大よそ1,500メートル以上の山を付加的条件として挙げている。
本書には北海道の利尻岳から始まって九州は屋久島の宮之浦岳まで百名山が紹介されている。百名山を全て登る、ということを目標にしている山好きも多いだろう。ぼくは学生時代にワンゲルの同好会に所属していたが、何座も登ってはいない。
登った山で一番印象に残るのは屋久島の宮之浦岳だ。当時は東京駅と西鹿児島駅間を急行列車が走っていた。30時間以上要したかと思うが、この列車で往復した。
屋久島は今のように観光地化してはおらず、本当に山好きな登山者が訪れていただけだったと思う。
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屋久島は5万分の1の地形図では4枚になる。ルートを赤い線で記した地図が自室に保管してある。
屋久島東海岸の安房(あんぼう)から山に入り、九州最高峰の宮之浦岳から永田岳まで縦走して西海岸の永田に至るルート(地図上を右から左へ移動するルート)は深田久弥のルートと同じ。違うのは季節、ぼくは同好会の仲間と共に夏7月、深田は冬12月に登っている。12月の宮之浦岳山頂近くには30センチほどの積雪があったことが本書に記されている。この山行で見た縄文杉もウィルソン株(地図右上)も当時は今ほど有名ではなかっただろう。
今は体力的に登山は無理。時々書棚から本書を取り出して、記憶の古層に残る山行を思い出すか・・・。