透明タペストリー

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「菊と刀」ルース・ベネディクト

2020-06-16 | H ぼくはこんな本を読んできた

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『菊と刀』ルース・ベネディクト(現代教養文庫1997年第43刷)

 これほど有名な日本人論、日本の文化論が他にあるだろうか。読んだことがなくてもこの書名とベネディクトという著者の名前は知っているという人は少なくないだろう。戦後まもなく出版された『菊と刀』はずっと読み継がれてきている。

巻末に収録されている「改版に寄せて」で訳者は次のように指摘している。**本書は、日本人の外面的な行動の描写と、それらの行動の背後にある日本人の基本的な考え方――日本文化のパターン――の分析とから成り立っており、そして外面的な生活の変化にもかかわらず、ある民族の文化のパターンはなかなか変化するものではない、という文化人類学的信念によって貫かれている。**
更に続けて、**西欧の、善と悪、精神と物質の二元対立観の伝統の上に立ち、この書の中でも、“罪の文化”と“恥の文化”、義務の世界と人情の世界、“恩と義務”、さらに“ギム”と“ギリ”の対比というふうに、二分法的思考を分析の主要武器として用いている著者が、どこまで日本人の価値観の体系を探り当てることに成功しているか、という所に関心の焦点が置かれるはずである。**(375頁)



西欧の「罪の文化」、日本の「恥の文化」というベネディクトの示した対比的図式に対し、様々な論考が寄せられた。『恥の文化再考』作田啓一(筑摩書房1972年初版9刷)もそのような論考。ぼくはこの本を1973年の10月14日~17日に読んでいる。この頃は日本人論に関心があり(今もあるが)、何冊か読んだ。