ある方から勧められて手にしてみたが、あっという間に読み終えた。一世紀も前に書かれたものにもかかわらず、表現は平易で非常に読みやすい。著者は、熊本城下に生まれ、軍人の道に進み、ロシアに潜入して諜報員として活躍した経歴を持つ。
「城下の人」は四部作の一冊目である。子供の視線で描く神風連の乱や西南戦争の体験記は実に生々しく面白い。後世から見るとエキセントリックな神風乱(敬神党)が、同時代の熊本市民から支持を得ていたことは意外であった。本書には、無名の兵士や市民に交ざって池上四郎、村田新八、谷干城、樺山資紀、更には田村怡与造、田中義一といった多彩な著名人が登場する。筆者が大津事件や日清戦争など歴史の転換点に立ち会い、様々な著名人と遭遇することができたのは、不思議なほどの幸運である。西南戦争前夜、熊本城の天守閣が焼失してしまうが、それを嘆いて涙する庶民の姿。行軍する薩軍兵士と世間話を交わす子供たち。まるでハイキングのような気分で薩軍の砲台を訪ねる市民。熊本攻城戦は我々が思い描いているより、案外のんきな闘いだったのかもしれない。いずれもその場に居合わせないと描くことができない現実である。
残る三作もいずれ読んでみたいと思う。
「城下の人」は四部作の一冊目である。子供の視線で描く神風連の乱や西南戦争の体験記は実に生々しく面白い。後世から見るとエキセントリックな神風乱(敬神党)が、同時代の熊本市民から支持を得ていたことは意外であった。本書には、無名の兵士や市民に交ざって池上四郎、村田新八、谷干城、樺山資紀、更には田村怡与造、田中義一といった多彩な著名人が登場する。筆者が大津事件や日清戦争など歴史の転換点に立ち会い、様々な著名人と遭遇することができたのは、不思議なほどの幸運である。西南戦争前夜、熊本城の天守閣が焼失してしまうが、それを嘆いて涙する庶民の姿。行軍する薩軍兵士と世間話を交わす子供たち。まるでハイキングのような気分で薩軍の砲台を訪ねる市民。熊本攻城戦は我々が思い描いているより、案外のんきな闘いだったのかもしれない。いずれもその場に居合わせないと描くことができない現実である。
残る三作もいずれ読んでみたいと思う。