史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

富津 Ⅲ

2016年05月13日 | 千葉県
(佐貫城跡)


佐貫城跡

 佐貫城の築城は室町時代にまで遡る。江戸時代に入って、内藤氏が二代にわたって城主となり、その跡を松平氏が継いだが一時廃城となった。その後、元禄年間、五代将軍綱吉の寵愛を受けた柳澤保明(吉保)氏が加増されて城主となった。吉保の転封後、再び廃城となった。宝永七年(1710)、三河刈谷より阿部正鎮が一万六千石で移り、以降、正興、正賀、正實、正簡、正、正身、正恒と続き、維新を迎えた。戊辰戦争に際し、内紛があり、態度決定に時間を要した。最終的には勤王に落ち着いたが、新政府より疑意を持たれることになった。

(安楽寺)


安楽寺


開闡院一乗日松居士(相場助右衛門墓)
演寶院妙義日相大姉(妻 寿美子)

 安楽寺に佐貫藩士相場勘右衛門の墓と慰霊碑がある。
 相場助右衛門は、文武両道の達人といわれる。文を大槻磐渓に、剣術を斎藤弥九郎の門下で、神道無念流の免許皆伝を得た。佐貫藩主阿部正身、正恒の二代にわたって家老として仕え、特に正身の信任が厚かった。藩主正恒が大坂城御加番を命じられたとき、側用人として随行。在坂中に天下の大勢を知った正恒は、助右衛門の意見を容れて、尊王に傾いた。しかし、このことが引き金となって、慶応四年(1868)四月二十八日、佐貫城大手門にて佐幕派三十二人の襲撃を受け、最期を遂げた。相場家は一家断絶、家族追放という悲劇に見舞われ、妻寿美子は後始末をして二年後に自害して果てた。墓石の背後に慰霊碑が建てられている。

 安楽寺は、西南戦争で戦死した佐貫出身の巡査八森良輔の菩提寺でもある。八森良輔の墓が残っていないか探してみたが、見つけることはできなかった。

(飯野神社)


飯野神社


飯野陣屋跡

 飯野陣屋は、初代藩主保科弾正忠正貞が、慶安元年(1648)に築造したもので、明治維新に至るまで、十代にわたって藩主の居所として利用された。正貞は、信州高遠上州保科正直の三男で、会津藩は本家に当たる。弘化四年()から嘉永六年(1853)まで会津藩が房総沿岸警備を命じられた際には、名代となって従事している。歴代藩主は、大坂定番、加番や江戸城門番等を務めることが多く、陣屋には代官を置いていた。禄高二万石のうち、飯野周辺は約三千石で、残りは関西地方にあった。
 現在、陣屋中心部には飯野神社が鎮座している。往時は約四万坪、陣屋内に本丸、二の丸、三の丸を備えた堂々たる陣屋で「三大陣屋」の一つと称される(残る二つがどこか不明ながら、現存しているのは、飯野陣屋のみだそうな)。周囲を巡る濠は、幅五メートル、底部がV字形の薬研堀で、部分的に往時の姿を留めている。
 のちほど調べたところ、三大陣屋とは上総飯野のほか、周防徳山と敦賀のことを指すそうである。


飯野陣屋濠

 戊辰戦争に際して、飯野藩も藩論を勤王に統一したが、藩内佐幕派との確執があって手間取った。そのため新政府から疑惑の目で見られることになった。

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君津

2016年05月13日 | 千葉県
(神野寺)
 実は鹿野山神野寺を訪れたのは、二回目である。前回も見付けられなかった榎本武揚筆招魂之碑を目指して再訪した。
 神野寺の寺務所で招魂之碑を尋ねてみたが、残念ながら寺の方では分からないという。そこから九十九谷公園やら、白鳥神社やら、鹿野山古道やらを歩き回ること約二時間。結局、招魂之碑の手掛かりすらつかめないまま、撤退することになった。かくなる上は、次回は必ずや発見するぞ、と固く誓った。


神野寺山門

(最勝福寺)
 春分の日の三連休、連日花粉が激しく飛散していたので、ほとんど家の外に出なかったが、さすがに三日も籠っているとストレスがたまる。三日目の早朝、五時に起床して、まだ暗い中を君津方面に向かった。
 最初の目的地は、君津市新御堂に所在する最勝福寺である。この境内に田沼意尊の墓があるはずであった。しかし、墓地を二~三周したが、出会うことはできなかった。田沼の墓、そしてその後の鹿野山の招魂之碑と、とにかくこの日は空振りが続いた。


最勝福寺

 田沼意尊は、有名な田沼意次の末裔で、天保十一年(1840)、家督を継いだときは相良藩主であった。元治元年(1864)の天狗党追討には、天狗党を追って敦賀に走り、そこで武田耕雲斎らを極刑をもって処断したことで知られる。慶応四年(1868)の鳥羽伏見の戦争でも会津・桑名藩兵とともに従軍したが、戦後、駿州方面の諸藩・旗本の情勢を知った意尊は急ぎ帰国して、二月二十三日、勤王証書を提出した。徳川家の駿府移封により上総小久保藩に転封された。

コメント (2)
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