映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

わが青春に悔なし  原節子

2009-04-08 21:06:21 | 映画(日本 黒澤明)
黒澤明の初期の作品、終戦翌年21年公開である。
原節子が男子学生と写っているポスター写真を見て、さわやかな青春ものを想像していた。そのためか見る機会がなかった。最近原節子さんの上品さに惹かれることが多く、この作品も見てみたくなった。
想像を超えるすさまじい原節子の汚れ演技ぶりに正直驚いた。

題材は京大滝川事件とゾルゲスパイ事件である。
題材をそこから得ているが、まったくのフィクションである注釈がいきなり出ている。

昭和8年、京大の教授大河内伝次郎のもとに学ぶ7人のグループがいる。教授の娘は美しい原節子
7人の中でも特に彼女に思いを寄せる二人の男性がいる。教授は政府批判の自由主義的論調に対して、文部大臣から更迭されてしまう。そのため言論の自由を求めて学内の紛争が起こる。二人の男性のうち藤田進は急進的な思想を持ち、当局に拘置されてしまう。もう一人は育ててくれた母親を思い、検事になる道を歩む。原節子は激しい言動の藤田のほうに惹かれるが、拘置されてしまったため恋は実らなかった。
5年後検事になった友に助けられ、執行猶予を与えられた藤田は軍部にかかわる仕事に携わるとのことで教授と原節子の前に現れる。思想転向した藤田を見て原節子は落胆する。そして、自宅を離れて東京で暮らすことを選ぶ。ところが上京後政治問題を研究所を開いている藤田に出会う。結局は二人は同棲し、実質結婚生活をするようになる。
ところがある日帰りを待っている原節子の前に現れたのは特高警察であった。。。

原節子は、育ちのいい上流のお嬢さまを演じさせたら天下一品である。
小津安二郎は娼婦を演じるよりも、良家のしつけのいいお嬢さんを演じるほうが
はるかに難しく、原節子ほどそれらしく演じられる女性はいないと言ったそうである。
まさに同感である。

最初の男子学生とのピクニックシーンで原節子の顔アップが出てくる。
非常に美しい。小津安二郎や成瀬巳喜男の映画では出てこないアップである。
しかしこのあと次から次に出てくる原の汚れたシーンがすさまじい。
特高にとらわれたシーンはまだ序の口で、彼の父母の故郷に行って、隣組の村八分にあいながら杉村春子と農作業に携わるシーンには恐ろしいほどの凄みを感じる。
ここではセリフも少なく、カメラワークも執拗に原節子を追いかける。
そののち黒澤作品を何度もとる中井朝一の撮影がすばらしい。

ちがった一面を見せる原節子を見るだけでもこの作品は価値がある。
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告発のとき  トミーリージョーンズ

2009-04-08 07:33:24 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
オバマ大統領がイラクを訪問した。
今でもイラクの立て直しという名目でたくさんの米兵が派遣されている。本当にご苦労なことである。しかし、トイレもシャワーもないところで活動することもある。この映画からも米兵たちの苦悩が良くわかる。

戦争に行ったあと精神状態がおかしくなったときの苦悩を描いたのは
「ディアハンター」「フルメタルジャケット」という旧作をはじめとしてたくさんある。この映画「告発のとき」もその一種であろう。

米軍軍曹であったトミーリージョーンズのもとに、息子が行方不明になっているという知らせが入る。戻ってこないと罰を受けるという話。おかしいと感じたフィリー父は息子の消息を探ろうとする。
同時に息子の携帯通信をさぐる。警察にも行って行方不明の捜索をお願いするが
軍人の行方不明者は軍管轄ですべしと拒否される。そんな時基地のそばの郊外で
バラバラ死体が発見される。フィリーの息子のようだ。。。。

冷静に考えてみると、戦後64年我々は本当に平和な世界にいることがわかる。
アメリカは二次大戦のあとも朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争と
休む間もなく戦争が続く、アメリカ人は本当にたいへんだ。
今月の日経新聞「私の履歴書」で博報堂の近藤さんが戦争体験を事細かに
記述している。戦後に生まれた我々は幸せである。

ジョーンズはオスカー作品「ノーカントリー」ではクレジットトップとなっているが、実際には殺人鬼バビエルバルダムに主役を奪われた感じでそんなに存在感は強くない。
しかし、ここでは存在感を見せる。「タイカップ」で見せた荒々しさを60過ぎた今も強く見せる。狂気に迫るシーンもあり老保安官、退役軍人なんて役は彼しかないという感じだ。

シャーリーズセロンの女警官役もいい。美人女優が見せる別の一面でかっこいい。
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