映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

祇園囃子  若尾文子

2009-04-22 21:08:10 | 映画(日本 昭和34年以前)
溝口健二監督の傑作、宮川一夫のカメラワークも素晴らしく京都の芸者たちの人間模様を鮮やかに描く。女を売って生きている姿を社会派的に捉えている部分もある。京都の町の町屋の映像もすばらしい

京都の芸者木暮実千代のもとに昔の知り合いの娘若尾文子が芸者になりたいと訪れる。
芸者になるための支度金も要るが木暮は茶屋の女将浪花千栄子に30万円を借りる。
芸者になるための踊りや囃子の稽古に精を出し若尾は木暮とともに座敷に出るようになる。
しかし、浪花の30万は祇園の上得意の専務さんが用立てたもの
上得意の専務はあるプロジェクトの受注をとるために懸命に役所の課長を接待している。
接待相手の課長は木暮の色気に参ってしまい、専務たちは木暮に課長の相手をするように説得するが。。。。。

若尾文子はまだ若い、舞妓の匂いをさせている。これから5年後には手馴れた芸者役も演じるが
ここでは幼さを残している。木暮実千代の色気はなかなかのもの、いわゆる旦那を作らず身の硬い
芸者役である。この2年後に同じ溝口監督「赤線地帯」で2人とも娼婦を演じる。その雰囲気とはちがう。
宮川一夫のカメラワークが魔の窟のような京都の街の景色と二人の美しさをうまくマッチさせる。
浪花千栄子も抜群だ。茶屋の上得意の男たちと芸者たちの微妙な関係を取り仕切る役
ここまでのやり手女将を演じられる人はそうはいない。浪花千栄子というと大塚製薬「オロナイン軟膏」のCMイメージが強い。テレビ「巨人の星」の提供が大塚製薬でボンカレーの松山容子やオロナミンの大村昆と一緒に出ていて、やさしい関西のおばあちゃんという記憶がある。

「サユリ」でチャンツィイーとミッシェルヨー、コンリーが京都の芸者を演じた。桃井かおりが芸者置屋のママ役。それ自体悪くはないのであるが、この映画のリアル感には到底及ばない。
「祇園囃子」にリアル感があるのは、脇役の巧みさである。
芸者置屋にいる下働きのおじさん、おばさんの身のこなしはいずれも明治生まれの人がもつ職人的な身動きを感じさせる。これは現代の俳優では演じられないし、いかにも日本らしいものだ。
そういった意味でも明治の女浪花千栄子のように祇園の女将を演じるのも現代では不可能

キャスティング、映像とも溝口健二の最高作といっていい傑作だ
コメント
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