映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

素晴らしき日曜日  中北千枝子

2009-04-11 21:29:02 | 映画(日本 黒澤明)
中北千枝子といってわからなくても「ニッセイのおばちゃん」の自転車に乗ったCMのおばさんといえばなんとなくわかる人も多いかもしれない。おばさんの顔は誰でもブラウン管で見たものだ。
成瀬巳喜男作品では彼が死ぬまでずっと付き合い続けた。「稲妻」「めし」「浮雲」「流れる」「娘妻母」などなど。彼女や加東大介が画面に登場すると待ってましたと言いたくなる雰囲気がある。成瀬が死んだ後、映画にほとんど出なくなって「ニッセイのおばちゃん」になりきった。「娘妻母」の原節子の友人のセールスレディ役が後の彼女の運命を変えた気がする。

脇役中心の彼女が主演しているのが黒澤明の「素晴らしき日曜日」である。
戦後昭和22年まだ焼け跡が残る東京で若い二人の一日を描いた作品だ。
顔がまだふっくらしている。21才くらいの作品なので声は同じだけど、「ニッセイのおばちゃん」とはダブらない。そののち昭和25年すぎの作品ではもっとやせてのちの顔とダブってくる。

お金のない二人が35円をもって一日ぶらぶらする。
今であればいくらであろうか?100倍の3500円といえばそうかもしれないが、もう少し少ない気もする。昭和25年の日経平均を100として現在が9000円と考えると、22年から25年まで多少のインフレがあったとしてもイメージ3000円くらいなのであろうか?結婚したいのだけれども住まいがない。動物園へ行ったり、旧友を訪ねてキャバレーに行ったりする。
何より傑作なのは東京公会堂に「未完成交響曲」を見に行く場面だ。A券25円、B券10円の切符の価格、二人には25円2枚を買うお金はなく、持ち金で買えるのは10円2枚である。並んでいたところ二人の前のアンちゃんが10円券を買えるだけ売ってくれと言ってまとめ買いをするので券が売り切れてしまって二人はコンサートに入れない。買ったアンちゃんがすぐさま10円の券を15円でダフ屋のように売り出すという場面である。
他にも戦後間もないことを示すセリフや場面がたくさん出てくる。

黒澤映画としては傑作の部類にはならないかもしれない。セットや美術も稚拙な感じがする。二人が演じる演劇的なタッチは物足りなさを感じるが、「貧しくても心は豊か」ということを物語は語っていく。戦後間もない時なのに、なぜか楽天的なのかもしれない。
コメント
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