映画とライフデザイン

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映画「北陸代理戦争」 深作欣二&松方弘樹

2016-05-26 05:10:18 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「北陸代理戦争」は昭和52年(1977年)公開の東映映画だ。


紀伊國屋書店の平置きコーナーで「映画の奈落 完結編」という本を見つけた。表紙に松方弘樹のヤクザ姿の写真があり、なんじゃこれとページをめくってみると、「仁義なき戦い」のころの実録もののことが書いてある。脚本の話にも触れていて、帯には立花隆「こんな面白い本があるのか」というコメントがあり思わず購入する。

読んでみると、ムチャクチャ面白い。映画「北陸代理戦争」は川内という福井を基盤にしたヤクザがモデルになっていて、その映画の背景と脚本を担当する高田宏治を追いかける。川内組と山口組直系の組との北陸の利権をめぐっての抗争が親分のルーツや素性を含めて念入りに調べていて、当時の川内へのインタビューを基本にしたすごいドキュメンタリー読み物になっている。しかも、川内組長はこの映画が公開された2ヶ月後に殺されている。確かにすごい本だ。


「北陸代理戦争」という映画の存在は知っていたが、今までdvdをピックアップしていなかった。深作欣二監督作品独特の緊迫感、スピード感をもって、ならず者の救いのない世界を描いている。しかも深作欣二監督はこの映画を最後に実録ものヤクザ映画を撮っていない。モデルの死にそれほど強い衝撃を受けてしまったのであろう。もともと「新仁義なき戦い」の延長で菅原文太主演だったのを事情で松方弘樹に代わっている。ここではトップスターめがけて這い上がろうとする松方弘樹の意地が見て取れる。

北陸福井の三国競艇場の場内外の利権をめぐって、川田組組長主人公川田登(松方弘樹)が自分の元の親分(西村晃)が約束通り自分に渡さないことで憤慨している。雪の海岸で首だけ出して埋めて、その周りをジープで疾走して言質をとらせる。親分は舎弟の万谷(ハナ肇)と組んで復讐をする。


万谷は、仲介役として大阪浅田組の斬り込み遂長・金井組金井八郎(千葉真一)に相談。金井はかねてより、北陸を支配下に入れようとねらっていたので、安本対川田の仲介役という名目で北陸にのり出すことにする。ある日、川田は万谷の闇打ちに合う。半殺しの重傷を負った川田は、自分の情婦であるきく(野川由美子)の実家で傷のてあてをする。公にはすでに死んだことにして身をひそめきくの妹(高橋洋子)が面倒を見ていた。

川田は傷がなおってから、まず万谷に復讐をし、刑務所に入る。出所後、川田は、大阪・浅田組に援助を依頼する。金井は、その行動があまりにもすごく、浅田組は金井に手を焼いていた。そこで、川田に援助することを約束する。川田は、浅田組の援助のおかげで、金井組の連中を北陸から追い出すことに成功。しかし、こんどは浅田組系の岡野組が幅をきかすようになる。川田はそこで、今は落目の万谷と安本に、地元を北陸のやくざの手にもどすことを提案。そして、川田は兄貴分でもある岡野組に挑戦状を叩きつける結果になる。

1.脚本家 高田宏治
一応フィクションと断っているが、実話に基づいたものである。ただし、現在進行形の争いごともあるわけなので、時間軸をかえたりしてフィクションらしくはしている。「仁義なき戦い」当初の作品は名脚本家笠原昭夫によるもので、最後の「完結編」だけを高田宏治が担当し、肌合いが違うという評価もあるようだ。しかし、観客動員は完結編が一番多い。そして「新仁義なき戦い」も引き続き脚本している東大出の東映生え抜きの脚本家である。元来インテリだが、裏筋に近い路線にも接近しているせいか、事情は十分承知している。



2.深作欣二
映画「仁義なき戦い」は70年代の日本映画の代表作といっても過言ではない。裏切りに次ぐ裏切りの中でアナーキーな登場人物の動きを手持ちカメラでとらえたあの映画の持つスピード感はただものではない。この映画でも臨場感ある深作映画らしいカメラが冴えわたり、今日本映画で一番引用が多いと思われる「仁義なき戦い」で何度も鳴り響くテーマ曲に類した曲を多発させる津島利章の音楽がこの映画の過激な動きを増長させる。お見事だ。

「仁義なき戦い」で理屈とはまったく無縁の猛獣のようなテキ屋の親分大友役を演じた千葉真一に同じテイストの武闘派の親分を演じさせるように、俳優の力を巧みに出し切らせている。また、ここではヤクザの親分を割り切って渡り歩く野川由美子の使い方もうまく、このあたりの女性の使い方がこの先の深作欣二のキャリアに大きく影響している気がする。


3.印象に残るシーン(高橋洋子)
映画「旅の重さ」のヌード姿で鮮烈なデビューを果たした時から五年たっている。でも顔立ちは幼い。ヤクザの情婦野川由美子の妹役である。追われている主人公をかくまい、気がつくと姉の男といい関係になっている。素朴で幼い顔をしながら、非常に情熱的な演技を繰り返している。


元々の肉親である地井武男演じる兄貴に向かって立ち向かい、刺すシーンの女の情念は深作欣二映画らしい激しい演出である。

いきなり雪の中を首だけ出した西村晃のまわりをジープが走り回るシーンを出して、ドッキリさせる。すげえなあと思ったら、次から次へとドッキリさせるシーンが続く。ある意味これでヤクザ映画と距離を置いた深作欣二の集大成的な作品なのかもしれない。



(参考作品)
北陸代理戦争
深作欣二実録もの映画の集大成


映画の奈落 完結編 北陸代理戦争事件
この映画製作の背景を書いたドキュメンタリー、おもしろい



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