映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ラブソング」 マギーチャン&レオンライ

2013-02-24 18:51:01 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ラブソング」は96年の香港映画の名作だ。
ラブストーリーでは不朽の名作といえる。
香港好きの自分はすぐ飛びついて感動、その後ヴィデオレンタルでは見たがDVDレンタルされているのを見なかった。しかも、アマゾンで売られているDVDの価格は高かった。ところが、何の気なしにアマゾン検索をしたら900円台で売っているではないか。すぐさま注文して久々の感動に酔いしれた。

記憶を刻み込むため、細かくストーリーを追う。

1986年3月1日。天津から香港へ一人の青年シウクワン(レオン・ライ)が青雲の志をもってやってきた。故郷には恋人のシャオティン(クリスティ・ヤン)を残してきた。
当然広東語は話せない。身寄りは叔母しかいなかった。外国人娼婦も同居するいかがわしいアパートの隅っこで世話になりながら鳥屋で働く。
ある日初めてマクドナルドに行ったシウクワンはアルバイトのレイキウ(マギー・チャン)と出会う。彼は大陸出身でファーストフードで注文する要領がわからずにいた。色々からんでくる彼にレイキウは香港では英語も必要と英会話学校を紹介する。彼女はさまざまなアルバイトをしていて、英会話学校でも掃除をするだけでなく、紹介料を稼いでいたのだ。地道に働く彼女にはプラザ合意による円高も影響し預金残高も増えていった。

年末、貯めたお金に一部借金を加えてレイキウはテレサ・テンのポスターやカセットを売る露店を女人街に構える。しかしテレサの歌が大陸出身者に受けるであろうという思惑は外れる。逆に大陸出身のテレサ好きと知られたくないため誰もカセットを買わない。香港人を気取る彼女も実は広州出身で、香港に来たばかりだ。友情を深めていた2人は慰めが恋ごころに変換され、キスを交わす。その晩はじめて夜を共にする。やがて、2人で会い続けるうちに、故郷の恋人との間でシウクワンの心は揺れる。

87年秋、その後商売はうまくいかない。相場も失敗してレイキウは3万HK$あった貯金のほとんどを失う。そこでサウナのマッサージ嬢の仕事を始めた。彼女はお店でヤクザのボスであるパウ(エリック・ツァン)と知り合う。パウの背中の刺青を見ても全然ビビらない彼女をパウは気にいった。相変わらず2人の関係は続いていたが、故郷の恋人へのブレスレットと同じものをプレゼントするシウクワンの無神経さに傷つき、レイキウは彼のもとを去る。

90年冬シウクワンは、故郷から彼女シャオティンを呼び、香港で結婚式を挙げた。
披露宴の席にはレイキウも招待した。結局彼女はマッサージの客だったヤクザの愛人となり企業グループの社長となり、望み通り金持ちになっていた。普通の結婚生活をしていたが、ときおり新婚夫婦と彼女が会うようになっていた。
ある日、シウクワンとレイキウが乗る車からテレサ・テンの姿が見え、シウクワンは上着の背中にサインしてもらう。彼が去ってゆく背中を見つめるうち、レイキウは抑えていた思いを再燃させ、ふたりは再び愛を交わす。

シウクワンは妻に打ち明けると言い、レイキウもまたパウに別れを告げる決意を固める。そんなときにパウの身辺に事件が起きる。
パウは警察から秘密をもらせば見逃すと言われるが、船で香港を脱出して台湾へ行くしかない。パウに別れの言葉をかけようとしたが、もはや見捨てることができない。レイキウはシウクワンを波止場に残したまま、パウと共に香港を離れる。
レイキウと離れてしまったのにもかかわらず、シウクワンは妻に別れを告げ、単身ニューヨークへ向かった。
2人は離れてしまうのであるが。。。

そのあとニューヨークでは予想もつかないことがいくつか起きる。ああもうだめかとがっかりさせた観客に一つの希望と安ど感を与える。
初めてこの映画を見た時、ものすごく感動した。

自分が初めて香港に行った90年代前半では、アカぬけた香港人の中に大陸の人たちのちょっとダサい服装とテイストの違った顔立ちがものすごく目立った。中年以上はともかく今の若い人に関してはまったく見わけがつかないようになった。それだけ豊かになったのであろう。それはそれで素晴らしいことだ。
でもこの映画が描かれた時代に生きた人たちの悲哀物語を見ていた方が胸にジーンとくる。
大陸でもマクドナルドがかなり増えたので、主人公の店での慌てぶりはありえないような話だけど、80年代だったらありうるかもしれない。キャッシュカードに奇異の目を見せる姿も同様だ。

図形の双曲線の軌跡を思わせる2人の接近、双曲線は交わりそうで交わらないが、この2人は腐れ縁で何度も接触する。そしていくつかの愛の話を積み重ねていく。高峰秀子主演の不倫映画「浮雲」同様「究極の腐れ縁映画」といってもいいだろう。不思議な引力が2人の間に存在する。レオンの振る舞いに不自然と思しき部分もないわけではないが、80年代半ばに大陸から香港に渡ってきた連中はこんなものだろう。
マギーチャン、レオンライはともに好演、2人が演じる恋の綱渡りをとらえるカメラワークもいい。



でもこの映画久々見て、脇役の仕事が気になった。
一人は香港にロケで訪れたウィリアム・ホールデンと過ごしたひとときを語るシウクワンの叔母の話。今は重慶マンションあたりのやり手ババアになり下がっている身なのに、昔の写真は凄い美人、この彼女に不思議な魅力を残す。
あとはクリストファー・ドイル扮する英会話学校の怪しげな教師とタイ娘との恋物語。クリストファー・ドイルは「花様年華」をはじめウォン・カーウァイ作品の撮影を担当してきた名カメラマン。最近ではジェットリー主演のハートフルドラマ「海洋天堂」でもカメラを担当する。主人公の恋話と同時並行にいくつかの逸話を積み重ねていたことをすっかり忘れていた。

何度見ても新鮮な発見がある傑作だ。
加えて故テレサテンの歌の響きに魅せられた。

(参考作品)

ラヴソング
交わりそうで交わらない2人の恋


花様年華
マギーチャンの代表作


天使の涙
殺し屋を演じるレオンライ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする