最近、東京都知事が横田基地の民間併用運動を熱心に進めている。
Yahoo検索で「横田基地」をキーワードにして検索すると東京都の考え方を簡明に説明しているホームページが出ている。(http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/kiti/kuiki/kuiki.htm )
最大の問題は、アメリカ軍管理で、民間機進入禁止の「横田空域」を日本へ返して貰うことにある。そうすれば民間機も横田飛行場へ離着陸できる。
横田空域は横田基地から西側、新潟県、長野県東半分、静岡県東半分など1都8県に及ぶ広大な空の範囲である。高さは地上7000mまでで、民間機は許可なくして進入禁止である。もちろん羽田上空や成田上空は横田空域の外である。
従って、小松空港行き、松本空港行き、あるいは能登空港行きの民間機は羽田を離陸後、急上昇をして高度7000m以上になってから目的地へ向かうことになる。
横田基地は200万坪の地上だけではない。本州の中央部の高度7000mまでもアメリカ空軍のものである。それで、筆者は初めて分かった。「なぜ九州、四国行きの旅客機がまず東京湾上空へ出て、大島を回って飛んで行くかが」。
西日本、九州、沖縄からの帰りの便も大体、大島上空を飛ぶ。
日本人の感情から言えば横田空域はとんでもない主権、領土権の侵害である。即刻返してもらいたい。と、誰でも思う。東京都知事の提案がもし感情的発想から始まったとしたら、その気持ちは十分理解できる。
ところが提案の説明までも感情的なニアンスで書かれている。
世界中に、アメリカの空軍基地がある。その国々では、アメリカ軍が空域を管理しているのだろうか?国際的比較論が皆無である。
またたとえ戦争が起きても、アメリカ軍が空域を管理する必要性はないとも考えられる。そんな考えを軍事技術上から、説得力ある説明を提示すべきである。
われわれ国民を感情的にあおりたてるような東京都の提案にはいささか疑問を感じざるを得ない。
ところで一方、アメリカ空軍の作っている横田基地に関するホームーページ;http://www.yokota.af.mil/main/welcome.asp をご覧頂きたい。
その崇高なミッションは世界的な視野である。アメリカ大統領の決定があれば何処にいる敵でも即刻攻撃できる態勢にあると高らかに言っている。
東京都の提案なぞ歯牙にもかけていない。冒頭のみ転写すると、
The mission of the United States Air Force is to deliver sovereign options for the defense of the United States of America and its global interests -- to fly and fight in Air, Space, and Cyberspace.
To achieve that mission, the Air Force has a vision of Global Vigilance, Reach and Power. That vision orbits around three core competencies: Developing Airmen, Technology-to-Warfighting and Integrating Operations. These core competencies make our six distinctive capabilities possible:
Global Attack: Because of technological advances, the Air Force can attack anywhere, anytime -- and do so quickly and with greater precision than ever before.
Rapid Global Mobility: Being able to respond quickly and decisively anywhere we're needed is key to maintaining rapid global mobility.
ちなみにこのホームページは内容が充実していて感心する。読んで行くと地元の福生市の市民との友好関係を仔細に報じている。
また横田基地と作戦上で連動して、西太平洋全域を守っている9ケ所のアメリカ空軍基地も書いてある;グアム島、アラスカ2ケ所、ハワイのヒッカム空軍基地、韓国の2ケ所の基地、そして日本の三沢、横田、嘉手納基地が西太平洋航空部隊として作戦連動している。
それではその全ての空域の管理はどうなっているのであろうか?
その比較検討をしてみると横田空域の管理を航空自衛隊へ返しも良いのではないか? このような客観的説明が東京都のホームページには無い。
その上で民間利用するための鉄道、ターミナルビルなどの建設投資がいくら必要か?東京都にはその財源があるのか?このような具体的な説明が皆無である。
横田基地を返して貰いたいとは皆が願っている。しかし東京都の説明はあまりにも説得力に欠けると言わざるを得ない。(終わり)
Andersen Air Force Base, Guam
Elmendorf Air Force Base, Alaska
Eielson Air Force Base, Alaska
Hickam Air Force Base, Hawaii
Kunsan Air Base, Republic of Korea
Osan Air Base, Republic of Korea
Kadena Air Base, Japan
Misawa Air Base, Japan
Yokota Air Base, Japan