この連載では中国の軍事力や経済の急成長をかなり詳しく書いてきました。しかしここで一休みして、中国が日本に与えた大きな影響として、「漢詩」を取り上げたいと思います。日本を取り巻く国際環境を考える場合、文化的な影響も重要と考えたからです。
漢詩は日本の学校で教えます。ですから日本人の生き方に影響を与えます。私も一生の間、折にふれ漢詩を思い出します。
今日は私の好きな漢詩をご紹介したいと思います。
好きな漢詩に、王維が友人の送別のために書いた、「渭城の朝雨、軽塵をうるおし」で始まる七言絶句があります。唐の都から西の陽関という関所を越えて西域の僻地に旅立つ親友との惜別の詩です。もう二度と会えないかも知れない友へもう一杯の酒を飲んでくれと言いながら別れを惜しんでいるのです。
「元二の安西に使するを送る」 王維
渭城の朝雨 軽塵を潤し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西のかた陽關を出ずれば故人無からん
「送元二使安西」
渭城朝雨潤輕塵
客舎青青柳色新
勧君更盡一杯酒
西出陽關無故人
この詩のポイントは故人にあります。故人とは古くからの友人や親友の意味です。そして 陽関は関所の名で、現在の甘粛省敦煌県の西南の玉門関の陽(みなみ)にあったのです。
それはさておき、皆様のうちで地方から中央に出て活躍しようとした方々も多かったと思います。当時は青雲の志を持って上京したものです。
その時、旧友は送別会をしてくれたに違いありません。そんな折に漢詩の得意な友人がこの詩を朗誦したかも知れません。
もう一つ李白の漢詩です。
「静夜思」 李白
牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷
牀前月光を看る
疑うらくは是地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思う
寝台の前に月光が差している。まるで地表を霜が覆っているかと見まがうほどだ。頭を上げて山ぎわにかかる月を見ていると、だんだん頭が垂れてきて 気が付くと故郷のことをしみじみ思っていた。
李白「静夜思」 漢詩の朗読 (roudokus.com) にはこの漢詩と多くの漢詩の朗読もあります。
今日「「日本を取り巻く国際環境」の(7)として日本人に深い影響を与えた漢詩をご紹介しました。
写真は現在の甘粛省敦煌県の西南の玉門関とその周辺の風景です。出典は、
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/page/culturecity/report/tonko-rep10/ です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)