今日は日本の宗教的習俗とよく似ている韓国の興味深い宗教の実態を書いてみたいと思います。日本人があまり知らない隣の人々の信仰の実態です。日本と非常に違う民俗信仰が混淆しているのです。その民俗信仰とは韓国のお寺の本堂の裏にある三聖閣へ対する信仰です。この三聖閣の中には3人の聖人がまつられています。「山神」、「七星」、そして「独聖」です。日本にある神仏混交に似ていますが、しかし三聖閣へ対する信仰は日本の神道とは非常に違います。
韓国に観光旅行に行くと大きなお寺に案内されることが多いものです。すると「大雄殿」という扁額のある本堂の建物へ案内されます。
1番目の写真は慶州の佛国寺(プルグッサ)の大雄殿です。私共も行きました。大雄殿の中にはお釈迦さまの教えを象徴する 仏像が祀ってありました。
2番目の写真は韓国のあるお寺の 大雄殿の中にある仏像です。大雄殿とは日本のお寺の本堂のことです。
お寺の本堂の裏の高い場所に三聖閣という建物があります。
3番目の写真は本堂の裏にある三聖閣です。この建物の中には3人の聖人、「山神」、「七星」、「独聖」がまつられています。この三聖閣への信仰は韓国独特のもので日本や中国や台湾には無い特殊な韓国の民俗信仰です。
「七星」とは、北斗七星を意味します。星に関する民俗信仰に取り入れたと考えられます。北極星を「熾盛光如来」、北斗七星を「七聖如来」とする信仰が七聖信仰です。これは中国の道教からきた信仰で、日本では妙見信仰と呼ばれています。韓国では独特に変化して、子供たちが短命でないように七星様にお参りをする民俗信仰になりました。
独聖は、天台山で濁世の衆生を救うために一人で修行する聖者を意味します。法堂の絵の中で、白い髭と長い眉毛をした仙人のような老人が独聖です。一般的には、那般尊者といいます。
山神信仰とは韓国の山々の山神を信仰するものです。特に、山神は農業、健康など、私たちの暮らしを見守ってくれていると考えられています。多くの場合、山神は虎と一緒に描かれています。山神信仰もまた、仏教固有の信仰ではなく韓国の民俗信仰です。
このような宗教の混淆は日本のお寺の本堂の裏山に神社をまつるのとよく似ていますが信仰の内容が違います。
日本の神仏習合の一例を書きます。東京の高尾山には薬王院というお寺がありますが、その本堂の裏には飯綱権現をまつった神道の殿堂があります。
明治維新後、日本では欧米の影響で宗教の混淆は悪いことだと考えられるようになります。そして神仏混交が禁止されましたが、それ以前のお寺の本堂の裏や横には必ず神道の拝殿と本殿があったのです。
これは韓国のお寺の本堂の裏に三聖閣があるのとよく似ています。
このような韓国の仏教と三聖閣の混淆の様子を知ると韓国人に非常に親しみを感じます。
次に韓国の世界の文化遺産の海印寺をご紹介致します。写真をお送りしながら海印寺の説明をします。
4番目の写真は海印寺の山門です。海印寺は1200年の歴史を有し、韓国三宝寺刹の一つです。美しい渓流が流れる伽揶山南側の深山の中にあります。
5番目の写真は海印寺で修行している僧侶たちです。海印寺は新羅第40代、哀荘王3年(802年)に、順応と利貞の二人の僧によって創建された寺院です。
6番目の写真は美しい曲線を描いている海印寺の屋根です。韓国のお寺の屋根は皆美しい曲線を描いています。実際に見る何故か懐かしい風景です。この海印寺が「法宝寺刹」とも呼ばれるのは、お釈迦様の教えのすべてをまとめた経典を保管していることにあるそうです。
韓国では三聖閣へ対する信仰と仏教が混淆しています。中国でも仏教と道教や妙見信仰や孟子廟や孔子廟への信仰が重複しています。中国も韓国も日本と同じ多神教的な宗教生活をしているのです。
今日は韓国のお寺の本堂の裏にある三聖閣へ対する信仰を説明しました。そして802年に創建された海印寺をご紹介しました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)