アメリカ人も含めてヨーロッパ人は残忍で戦争が好きな人々です。その文化には暗い闇がひそんでいるのです。ですから、「ヨーロッパ文化の闇」という連載記事はいくつでも続けられます。しかし、ヨーロッパ文化の闇(7)アメリカの干渉がイスラム圏の内戦、政情不安の原因 まで書き進んで来て、これでは片手落ちなことに気がつきました。
ヨーロッパ文化には素晴らしい側面もあるのです。それは人類の歴史に燦然と輝く文化なのです。この地球という惑星の上に華麗に花開いた貴重な人類文化なのです。
そこで、その素晴らしさも連載として書いて行くことにしました。ただし書くことは自分自身で体験して、初めて理解できた部分のみに限定したいと思います。
本で読んだり、想像したりして「理解したつもり」のことはなるべく排除したいと思います。それらは机上の空論であり、間違った理解になる危険性があるのです。
そこで第一回の連載記事は25年間、独りで、ヨットという西洋の小型帆舟を走らせて骨身に沁みたことを書きます。それは「帆船はヨーロッパ文化の神髄」という私の体験的理解なのです。
一般に日本人はヨットに関心がありません。嫌悪感さえ持つ人も多いようです。
しかしこの先も是非お読み頂きれば大変嬉しく思います。
まず昨日撮ってきた帆走中の4隻のヨットの写真を示します。場所は霞ヶ浦の土浦の沖です。
この小さな帆舟には三角形の2枚の帆がついていて写真の右の方向に走っています。それも帆の開き方から風上に向って走っているのが分かります。
風に向って走れる帆舟を改良に改良を重ね、完璧な構造を作ったのがヨーロッパ人なのです。
中国の船も日本の船も風上には絶対に登れないのです。
この西洋の帆舟をもう少し大きく写したのが下の写真です。
真ん中に胴体の中に、「船室」のあるヨットが2隻写っています。右側にカバーのかかった大きなモーターボートも写っています。
高いマストが大きな帆を2枚てっぺんまで上げられるような構造になっています。ちなみに黄色の線の描いてある帆舟は私が昔13年間乗っていた舟です。
こんな高いマストに帆を上げて、横風を受ければ簡単に横転しそうです。
私自身もそれが心配でした。強風で横転しそうに傾いたことは何度も経験しました。しかし不思議にもしばらく我慢していると帆舟が自分で立ち上がるのです。その復元力の大きさには何度も驚いたものです。
その復元力の原因は、昨日撮った下の写真に示してあります。
この舟も昔、私が10年間乗ったもので、現在は群馬県のある方が美しく保ちながら大切に乗っています。ヤマハ19という船齢30年くらいの帆舟です。
写真の右側に大きくぶら下がっているのが舵です。
この大きな重い舵の前方の船底から鉄製のキールがぶら下がるように固定されています。写真の真ん中より少し左に舵より小さく写っていますが、実際は舵より広く大きな鉄製の板です。
これこそが復元力の秘密のカギなのです。舟の全重量の三分の一以上から半分近くの重量があります。
沖で強風に吹かれて、45度以上も傾いたこのヨットにしがみついて我慢していると、間もなく立ち上がってくれるのです。その度に西洋人に助けられたと実感するのです。
またこのキールのお蔭で横流れも防げます。ですから2枚の帆を狭く絞って立てると風上45度までは登れるのです。45度ずつジグザグに登れば、完全に風上に向って走ったことになります。
この様に完全に風上に向って走るのがヨットの一つの醍醐味で、その間中、西洋人は偉い、偉いと呟いているのです。
ヨットという小型帆船を走らせていると、その構造や部分品には全く無駄というものが無いのです。不必要なものをそぎ落として、そぎ落として軽くしてスピードが出るような構造にしてあるのです。
不必要なものをそぎ落としても必要なロープや部分品は間違いなくついています。それで強風の怖い状況から逃れたことが何度もありました。その度に西洋人の英知に感服するのです。
この帆舟の体験のあと、横浜に係留展示してある大型の帆船日本丸を何度か訪問して、その船長に詳しく説明してもらいました。詳しいことは末尾の参考記事にありますので省略します。
ただその時年老いた船長の云った言葉が忘れられません。「帆船はヨーロッパ文化の神髄」だと言ったのです。そして帆船を実際に体験するとヨーロッパ文化が判るとも言っていました。全く同感です。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
=====参考記事2件==================
25年間のヨットの趣味を振り返って(1)ヨットの構造に魅了される
25年間のヨットの趣味を振り返って(2)帆船・日本丸を訪問する
・・・・・この日本丸を訪問すると、一番、目立つのがロープ類です。
ところが、帆船の船乗りはロープという言葉は絶対に使わないのです。
使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前で呼ぶのです。
日本丸では29枚の帆と横桁(ヤード)を動かすためのロープが245本ついているそうです。
甲板上の装置は全て人力で動かします。ロープを手で引っ張ってみて、何処が動くか見ればロープの操作方法が理解できるのです。
その仕事をするのがセーラーという水兵達なのです。セーラーは直訳すれば帆走員です。水兵というと誤訳になります。そのセーラーを管理するのがオフィサー(将校)です。
こような海軍の組織もヨーロッパ文化の一部として高く評価すべきと思います。・・・・・・・
下に帆船日本丸が帆を上げたところの写真を掲載いたします。
(撮影日時:2008年4月25日午後2時、撮影場所:横浜市西区みなとみらい2-1-1岸壁にて)