575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

火のけなき家つんとして冬椿     一茶

2007年01月23日 | Weblog
 ツバキの学名は、カメリア・ジャポニカであるが、日本固有種ではない。
 自生しているのはヤブツバキ、ユキツバキ、ヤクシマツバキの三種。
 ツバキは花を愛でるだけでなく、実から油も採る。
 しかし、それだけではない堅い材を生かした用途も多い。 その一つに「媒染剤」としての利用がある。
 万葉の「 紫は灰さすものぞつば市の 八十のちまたにあえる児や誰」は「紫」の染めに灰が必要なこと、殊にツバキの灰が良いことを「つば市」という町の名で表現しているという。
 正倉院に残っている文書に「ツバキの灰を八十五石ニ斗買う。値段は三貫九十五文」と書かれている。
 927年に完成した「延喜式」にも
  深紫色 ・・紫草三十斤、酢二升、灰二石、薪三百六十斤
  浅紫色 ・・紫草 五斤、酢二升、灰五斗、薪六十斤
とある。
 灰汁の中には、色々な金属が少しずつ溶けている。その中でアルミニューム・イオンと鉄イオンが染料と布地をしっかりくつっける仲立ちをし、発色させる。
 ツバキの木には、他のどの木よりアルミニュームが多く含まれている。
 古代の人々は、確かな科学者であり、技術者であったと、ただ感心するばかりである。
 それにしても「ムラサキ」は幻の花になりつつあり、ほとんど目にできない。
 紫草三十斤(換算すると18kg)。それも乾燥した「根」のことだろうから、
その頃どれほどの「紫草」が咲き誇っていた事か。 そんな昔に行ってみたいものである。
                              草 女

 ※ なお、大竹三郎著「色を深める」大日本図書を参照した。
             
コメント (2)
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