『野ざらし紀行』のなかの一句。
鳴海で詠んだとされています。
高柳克弘さんが、こんな解説をしています。
聞いている「鴨のこゑ」を、「白」という色によって
視覚的に言いとめている。
ある感覚を別の感覚と関連させる共感覚の表現は、
ヴェルレーヌ、ランボーらに代表される
十九世紀のフランス象徴派でさかんに試行された。
掲句はそれに先立つこと二世紀にして、彼らの詩に劣らない斬新さを持つ。
のみならず「ほのかに」の効果も見逃せない。
「鴨のこゑ白し」では感覚の独走。
それを軽減させる「ほのかに」の慎ましさは、
フランス象徴詩には見られない俳句ならではの特質といえる。
(フランス堂のホームページより) 遅足