題詠「寒」
柔らかな魚寝ている寒の河岸
寒鴉鳩の撒き餌ににじり寄る
北風の上書きをする寒の入り
ばぐだっど爆裂火焔寒茜
通夜の客どっと帰りし寒さかな
竿先に寒ばえの跳ね小正月
寒行や指赤黒し足袋の穴
寒風や落ちたる花のどぶ掃除
寒流は真っ青だったと潤目の眼
朝ぼらけつつけばひびく寒さかな
みぞおちに寒鯉飼ふと答えけり
子ら行けば元の静けさ寒の入り
自由題
千両の実の果てしあと葉の戦ぐ
背負われる児全身の笑い初め
時雨きて玉響(たまゆら)の虹野に低し
山男蜂の子置いていなくなる
縫い代をたっぷりとって去年今年
さよならと振った手おおきくなっている
冬落暉おんながひとり観覧車
屈葬のミイラのかたち去年今年
雪降れば肩ふれ合って屋台酒
何するもはじめはじめと初笑い
元旦や春色の皿並べおり
幼子の肩に湯かける霜夜かな
(遅足)