575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

春寒や夜の厠のひとり言  江本絵悶

2007年04月11日 | Weblog

中日俳壇に載った江本さんの句です。
面白い句ですね。
今はトイレ。厠とは言いませんが、トイレでは句が成り立ちませんね。
厠といえば思い出すお話があります。

大昔、大阪府三島郡のセヤダタラヒメが
厠に用足しに入っていたところ、
流れてきた赤い矢が女陰(ホト)を突きました。
その矢は立派な若者となり、二人は結婚したというものです。
大昔の厠は川のうえにあったんですね。自然の水洗便所ですね。

若者は大和三輪山の神で、二人の間に生れたヒメが
ホトタタライススキヒメです。
このヒメの名は、直訳すると、
ホトに矢を立てられて驚きあわてるヒメとなると、
作家の田辺聖子さんが書いています。

   

昔の人は、厠は異界との出入り口と考えていたようです。
今でもトイレの花子さんという子供たちの怪談には
トイレが欠かせない舞台となっています。

江本さんの句もこうしたトイレのイメージを
呼び起こしてくれます。
でも、厠のひとり言って、ちょっと不気味ですね。

               遅足




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黄水仙   遅足

2007年04月11日 | Weblog

水仙の白い花が姿を見せなくなったと思ったら、
あざやかな黄水仙が顔を見せています。
水仙は冬の季語、黄水仙は春ですから文字通り季節の変化を
色で教えてくれています。

 卓上に家庭百科と黄水仙  遠藤梧逸

黄水仙は、ヒガンバハ科の多年草で、北アフリカが原産。
江戸時代に日本にやってきたそうです。
早春の花といえば、たんぽぽ、福寿草など、
太陽を感じさせる黄色が多いように感じます。
黄水仙も、北アフリカの太陽に負けない強い色ですね。

   

北アフリカといえば、私達の世代にとって懐かしく
思い出されるがフランスの作家カミユ。
「不条理」の作家です。
その代表作である「異邦人」の舞台が北アフリカ。
強烈な太陽が、あの「不条理」の文学を生み出したのかも。

 黄水仙死は斜めからやってくる  遅足

花言葉は「自己愛」。
ギリシャ神話の美青年(ナルシスサ)が泉に映った自分に恋をして
毎日覗きこんでいたので水仙になったとか。
だから水仙はうつむいて下向きに咲いているのだそうです。

 異教徒の祈りは長し黄水仙  青柳志解樹


    


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