11月中旬の九州旅行の折、出水平野のツル飛来地を見学してきた。テレビの映像で見たことがあるが、本物は余りの数の多さに言葉も出てこない。観察センターにいたボランチアの説明では、目の前にいるツルは3000羽位で、出水平野には10000羽を超えるツルが飛来しているとのこと。ナベヅルが8割、あとはマナヅル、クロヅル、カナダヅルなどがいる。数少ないクロヅルやカナダヅルを見つけ出すことはできなかった。ツルは繁殖地のアムール川周辺ではおよそ3キロ四方に1家族が生息する程度であるとその人は言う。それをウオッチングするのは至難の業であろうが、越冬地の出水平野では、余りにも多くいて、有難味がわかない。江戸時代まで、ツルは全国各地にきてい
た。ツ、ルを猟できるのは藩主だけで、ツルは保護されていた。明治時代に一般の人も猟が許されるようになり、ツルは姿をけした。しかし、出水平野と山口県の八代では、ツルの保護を続け今にいたっている。ここ出水平野では国の天然記念物として餌付けもしているのでことに多くのツルが越冬している。このツルを見ていて、「桜田へたづ鳴き渡るあゆちがた 潮干にけらしたづ鳴き渡る」(高市 黒人)のたづはこのツルだと確信した。今迄ツルと言えばタンチョウとなんとなくイメージしていたが、タンチョウはもっと寒い方を好むし、朝鮮半島から、一気に渡って来るナベヅルやマナヅルがあゆちがたまできたほうが自然だとおもった。
後日、バードウオッチングの仲間から、伊勢平野にナベヅルが11羽飛来したことを聞いた。愛知県にも 「たづ鳴き渡る」 が復活するかもしれない。
ツル観察センターに戦後からの飛来数の記録があった。昭和20年から25年までは
200羽を超える程度で、朝鮮戦争が終わった頃から、数が徐々にふえている。10000羽を超えたのは、平成になってからで、その数は安定している。どんな野鳥も数を減らさないためには、平和が第一、それから人々の自然保護の意識が必要である。
なお、出水平野といっても、そこは稲を刈った水田。ツルのために農家から借り上げ、3月31日までは持ち主といえども水田に入ることはできない。ツルが水田で餌をとっているのをまじかにみて「たづ」がナベヅル達だと思ったのは、たづを漢字で田鶴とかくからだ。
名古屋にも鶴舞、鶴里などの地名が有り、ツルが来ていたに違いない。どちらも昔はツルが好む湿地だ。ことに鶴里はあゆちがたを少し奥に入った場所である。ロマンを感じている。