575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

悪い夢       森野満之

2010年10月30日 | Weblog
森野満之さん。
1945年旧満州国生まれ、北海道育ち。
東大卒、詩人。

詩集を読んでいたら、こんな詩がありました。

      

題は「悪い夢」です。

嫌いになったと、というなら致し方ありません
でも、はじめから愛情がなかった、とか
押し付けられてしぶしぶ承諾した、とか
いまさらそのようなことをおっしゃられても
それはあんまり身勝手ではありませんか
その頃はとても貧しくて
私は初めてのことに胸をときめかせていたけれど
あなたの心は恨みを残していたのですね
あれからずっと
私たちの関係はぎくしゃくしていましたが
あなたの思い通りにならなかったのは
みんな私のせいなのでしょうか
もう六十年以上も経ったのだから
実情にそぐわなくなった、と
そらぞらしいことをおっしゃるけれども
その実情とやらも、もとはとえいば
あなたがつくってきたことではありませんか
私に替われと言われても
どこがどういけないのか分かりません
私と出会う前に戻りたいなんて
あなたはきっと悪い夢を見ているのですね

君が心に秋や来ぬらん、と
古風に嘆いているのではありません
はじめから愛情などなかったのに
あるふりをしていたあなたが情けないのです
女心をもてあそばないで
本当のことをおっしゃってください
普通の国にあこがれるあなたは
七つの海を越えて
威光を放とうとなさるけれど
お金をちらつかせるだけでなく
力のあるところをみせつけたいなんて
野暮なことは言わないでください
強い顕示欲は
あなたの目指す美しい国にふさわしくありません
温情をなくしたあなたは
とにかく私が悪いというばかり
あなたが本当に欲しいものは
何ですか
私と別れなければ得られないものは
いったい何ですか

   わが袖にまだき時雨のふりぬるは
     君が心にあきやきぬらむ
              (古今和歌集)

         

とてもオモシロイ詩だと思いません?   遅足




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露の句を楽しむ⑨      遅足

2010年10月30日 | Weblog

    痩せ猫の露の茂みを抜けにけり   愚足

家ネコはまるまると太って、いわば肥満ネコが多い。
痩せたのは野良猫でしょうか。

猫は水が苦手。濡れるのが大のキライ。
露の茂みも苦手でしょうね。

庭にやってきたネコの様子を
じっと見詰める作者のあたたかい視線を感じます。

           

わが家の近くにも野良猫がいます。
餌をやる人がいて、ドンドン仔猫が・・・
顔を見ると、皆、個性的で、なかなかの面構えです。




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冬の雨夜明けの山を見つづける    朱露

2010年10月30日 | Weblog

     東の低い山並みはなだらかに南へ走る。
     北の山々は背中の後にあって寝ている。
     西は昔名古屋へ通勤したのでもういい。
     何しろ大平野なので取り付く島がない。

               



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