575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

心に残る映像   竹中敬一

2016年12月02日 | Weblog
CBCテレビの「 伊勢神宮・五十鈴川を行く」(11月3日放送) を見ました。
高画質の4Kカメラやドローンで撮影した映像は見事でした。
これを見て改めて、映像のもつ力について考えてみました。

私がテレビ局にいた頃、青森放送に北国の風土に根ざした優れた
ドキュメンタリー番組を手がけるディレクターがいました。
木村昱介 (きむらいくすけ)氏です。
彼の作品に、津軽三味線の高橋竹山を取り上げた「寒撥(かんばち)」
(昭和46年度芸術祭優秀賞) があります。
番組の構成者、鳥山拡氏によると、竹山の弾き語りをビデオカメラで収録中、
音声に異常はないものの映像が乱れ始めました。
予算のこともあって撮影を続け、映像をそのまま放送に使かったそうです。

この不思議な映像は津軽三味線の音色と共に、北国の厳しい心象風景を
映し出したようにも見え、計らずも、見る人に感銘を与えたのです。

私が制作した「木曽の四季」は、カラーフィルムによる撮影でした。
白黒時代でカラーはまだ珍しかったのです。
現像代が高額のため、どういう色に仕上がるのかもわからず、
白黒で編集したものを、最終的にカラーに現像して放送していました。
木曽の山々を空撮したいのですが、ヘリコプターを飛ばすには、費用がかかります。
二ユースでヘリを飛ばす時、ついでに撮ってもらったことを憶えています。

地方の民放局では、厳しい予算のもと様々な制約を受けながらの制作。
今もそう変わりないでしようが、少なくとも、現像代のことも気にしながら、
フィルムで撮るのを最小限に抑えたりする心配はなくなりました。
ドローンや水中カメラも比較的簡単に使用できるようになり隔世の感があります。

「木曽の四季」が芸術祭優秀賞を受賞した時、ある審査員から
「哀愁が漂う映像が心に残った」と云つていただきました。
私はこの言葉が気に入っています。「哀愁が漂う映像」は多分、フィルムで
なければ表現できなかったと思います。

映像技術は8Kやバーチャルリアティー (VR) など進化を続けています。
制作者は、技術の進歩に負けない、心を打つ作品をつくるために
一層の努力を期待したいと思います。

             

写真は、放送番組センターの月刊誌(1976年1月号)に提出したものです。
昭和49年秋に撮影。御岳山が全貌を現すのは珍しく苦労しました。



コメント
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