575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「 みんぺーさん 」のこと ~ 竹中敬一

2019年02月23日 | Weblog


今年の1月中旬、愛知県の渥美半島を車で一周 、一足早く春を満喫

してきました。

特に半島の東側、遠州灘に面した街道の風景に魅了されます。

特産のシラスなどの魚介類を食したいところですが、腎臓病のため、

それは諦めて、かねてから尊敬していた " みんぺーさん " の蔵書が

あるという田原市の渥美図書館へ行ってみました。


杉浦明平 ( 1913 ~ 2001 )は、田原市の生まれ 。

地元にしっかり根を下ろし、小説家、随筆家として、独自の見解を発信

し続けました。

また、町会議員を務めたり、畑仕事をするなど常に行動する人でもあり

ました。

明平さんからの寄贈を受けて、渥美図書館の2階には特別の部屋があり、

約9000部が、また1 階の閲覧室にも約8000部 と 合わせ1万7000部

を公開、閲覧できるようになっています。

夏目漱石、森鴎外、萩原朔太郎らの初版本から群書類従などの歴史書と

多岐にわたっています

明平さんが残した業績が広範囲に及ぶため、私が読んだ「 ノリソダ騒動記 」

( 未來社 )、「レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」( 岩波文庫 )だけに

ついて、触れておきます。

私は昭和39年から44年にかけて、テレビ草創期のドキュメンタリー番組

「 カメラルポルタージュ 」 ( 30分 TBS 系 )で計 18作品を手がけました。

様々な話題を取り上げましたが、いつも、そのネタ探しに苦労しました。

そんな折、読んだのが ルポルタージュ文学の先駆けともいうべき「 ノリソダ騒動記 」

ノリ養殖の利権をめぐって 「 地方ボス 」と明平さんら共産党の地区細胞

との闘争を時には、ユーモラスに描いた作品でした。

この手法をテレビに取り入れるてみようと思いました。

昭和41年放送の「 密漁 ~ かなしき沿岸漁民 ~ 」は、漁場を失った愛知県の漁民が

三重県の漁場に入り込み、密漁で捕まるまでを追いながら、なぜ、隣同士の同じ漁民が

争わなければいけないのか、追われいく姿を描いた作品です 。

明平さんの作品をヒントに企画 、制作したものでした。

また、昭和 43年、列車トイレのタレ流しによる黄害をルポした「 列車糞尿譚 」

( 日本民間放送連盟 金賞 )も意識はしていませんでしたが、今から思えば、

明平さんの作品の影響を受けていました。


平成7年、愛知県美術館で開かれた 「 レオナルド・ダ ・ヴィンチ人体解剖図 」展に

合わせて、テレビ番組制作の際は、杉浦明平の翻訳 「 レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 」

( 岩波文庫 )を参考にさせてもらいました。

杉浦明平の履歴 ( 田原市博物館 ) によると、東大文学部を卒業後、昭和13年、

原典によるルネサンス研究を志し、東京外国語学校 ( 東京外大 )に一年間

通ってイタリア語を取得。戦時下でダ・ヴィンチやミケランジェロなどルネサンス文学

の翻訳、研究に取り組む中で 「 レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 」を翻訳 しています。

昭和29年 岩波文庫として 上巻、4年後に下巻を出版しています。

この中に人体解剖のことも書かれていています。

愛知県美術館で展覧会が開かれた当時、ダ・ヴィンチの人体解剖図に関して、日本語で

書かれた美術書は見当たりませんでした。

明平さん訳の 「 レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」だけが手がかりでした。

何しろ、ダ・ヴィンチはモナリザなど絵画で有名であるばかりでなく、建築家、天文学、

解剖学などにも詳しく、万能の天才と言われているだけに、その全体像を知ることは

難しいようで、それぞれの分野で専門家がいます。

人体解剖図については 、これを所蔵している英 ウインザー城 王立図書館で医学博士の

称号を持つ学芸員の方に解説してもらいました。

ダ・ヴィンチが残した様々な業績について研究するには、今でも明平さん訳の

「 レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」が役立っていることと思います。


写真は愛知県南部の渥美半島、 半島の東側 遠州灘に面した所から撮る 。


コメント
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