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【一口紹介】
「昭和」という時代が匂い立つ社会派ミステリーの傑作!昭和の日本を震撼させた「三億円事件」までも取り込んだ複眼的ミステリーは、まさに横山秀夫の原点。人気絶頂の著者がデビュー前に書いた”幻の処女作”が、15年の時を経て、ついにベールを脱いだ!(帯封より)
【読んだ理由】
横山秀夫の処女作にひかれて。
【ストーリー】
平成2年12月、警視庁にもたらされた一本のタレこみ情報。15年前に自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人事件だった。--しかも犯人は、教え子の男子高校生3人だという。時効まで24時間。事件解明に総力を挙げる捜査陣は、女性教師の死と絡み合う15年前の「ルパン作戦」に遡っていく。「ルパン作戦」---3人のツッパリ高校生が決行した破天荒な期末テスト問題奪取計画には、時を超えた驚愕の結末が待っていた・・・。
【印象に残った一行】
戦争では人が死に、学生運動でも血が流れた。それはそれで終わったことと見切りをつけ、わけのわからない豊かさに包まれてみると、社会は妙にとりすました大人の顔になった。面と向かって争わず、まして血など流さず、代わりにルールとか分別とかが幅をきかせ、善行だとか人のためとか、そうした正論の濾過器に世の中すべてがけられていった。しかし、そもそも成熟社会などありえない幻想だから、正論では濾過しきれない矛盾だらけのブツブツがのこってしまう。なんというか、正論社会への疑念と憎悪がごちゃ混ぜになったような手ごわいブツブツが・・・。
【コメント】
さすが横山秀夫という感じ。処女作にしては完成度も高く、読み出したらやめらない面白さ。意外な展開シーンもあるが最後は感動的シーンの連続で社会派ミステリーの面目躍如。