日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第九十一段

2021年03月16日 | 徒然草を読む


【原文】  
  赤舌日といふ事、陰陽道には沙汰なき事なり。昔の人、これを忌まず。この比、何者の言ひ出でて忌み始めけるにか、この日ある事、末すゑとほらずと言ひて、その日言ひたりしこと、したりしことかなはず、得たりし物は失なひつ、企たりし事成らずといふ、愚かなり。吉日を撰びてなしたるわざの末とほらぬを数へて見んも、また等しかるべし。

 その故は、無常変易の境、ありと見るものも存ぜず。始めある事も終はりなし。志は遂げず。望みは絶えず。人の心不定うなり。物皆幻化なり。何事か暫くも住する。この理を知らざるなり。「吉日に悪をなすに、必ず凶なり。悪日に善を行おこなふに、必ず吉なり」と言へり。吉凶は、人によりて、日によらず。

【現代語訳】
六日ごとに訪れる赤舌日という日がある。陰陽道の占いの世界では、取るに足りない事である。昔の人は、こんな事を気にせずに暮らしていた。最近になって、誰が言い出したのかは知らないが、不吉な日だと言う事になって、忌むようになった。「この日に始めた事は、中途半端で終わり、言った事、行った事は、座礁し、手に入れた物は、紛失し、立てた計画は、失敗に終わる」と言うのは、馬鹿げたことだ。敢えて大安吉日を選んで始めた事でも、行く末を見てみれば、赤舌日に始めた事と同じ確率でうまくいってない。

 解説すれば、世界は不安定で、全ての物事は、終わりに向かって緩やかなカーブを描いている。そこにある物が、永遠に同じ形で存在することは不可能である。成功を目指しても、最終的には失敗し、目的が達成できないまま、欲望だけが膨れあがるのが世の常だ。人の心とは、常に矛盾していて説明出来るはずもなく、物質は、いつか壊れて無くなる事を思えば、幻と一緒である。永遠など無いのだ。このシステムを理解していないから「吉日の悪い行いは、必ず罰が当たり、悪日の良い行いは、必ず利益がある」などと、寝言を言うのである。物事の良い悪いは、心の問題で、日柄とは関係ない。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2021/03/16)

2021年03月16日 | Daily Vocabulary
26851.There you go(はい、どうぞ)
Your total comes out to $23.15. There you go. 
26852.There you go(それでいいよ)
There you go. I told you it's not that difficult. 
26853.There you go(よくやったね)
I got accepted to Tokyo University! There you go! I knew you'd get in. I'm proud of you. 
26854.There you go(その通り)
Yeah. There you go! 
26855.There you go again(ほら、またやった(言った) )
There you go again. How many times do I have to tell you to turn off the TV if you're not watching it? 


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