日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第二百二十段

2023年09月05日 | 徒然草を読む
 


【原文】 
「何事も、辺土は賤しく、かたくななれども、天王寺の舞楽のみ都に恥ぢず」と云ふ。天王寺の伶人の申し侍りしは、「当寺の楽は、よく図を調べ合はせて、ものの音のめでたく調り侍る事、外よりもすぐれたり。故は、太子の御時の図、今に侍るを博士とす。いはゆる六時堂ろの前の鐘なり。その声、黄鐘調の最中なり。寒・暑に随ひて上がり・下がりあるべき故に、二月涅槃会より聖霊会までの中間を指南とす。秘蔵の事なり。この一調子をもちて、いづれの声をも調へ侍なり」と申しき。
凡そ、鐘の声は黄鐘調なるべし。これ、無常の調子、祇園精舎の無常院の声なり。西園寺の鐘、黄鐘調に鋳らるべしとて、数多度鋳かへられけれども、叶はざりけるを、遠国より尋ね出だされけり。浄金剛院の鐘の声、また黄鐘調

【現代語訳】  
「何事も、辺鄙な片田舎は下品で見苦しいが、天王寺の舞楽だけは、都に勝るとも劣らない」と言う。天王寺の奏者が、「我が寺の楽器は、正確にチューニングされている。だから響きが美しく、他の舞楽よりも優れているのだ。聖徳太子の時代から伝わる調律の教えを今日まで守ってきたおかげである。六時堂の前に鐘がある。その音色と完全に一致した黄鐘調の音だ。暑さ寒さで鐘の音は変わるから、釈迦入滅の二月十五日から、聖徳太子没日の二月二十日の五日間を音の基準とする。門外不出の伝統である。この一音を基準に、全ての楽器の音色をチューニングするのだ」と、言っていた。
鐘の音の基本は黄鐘調だ。永遠を否定する無常の音色である。そして、祇園精舎にある無常院から聞こえる鐘の音なのだ。西園寺に吊す鐘を黄鐘調にするべく何度も鋳造したのだが、結局は失敗に終わり、遠くから取り寄せる羽目になった。亀山殿の浄金剛院の鐘の音も、諸行無常の響きである。 

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。



Daily Vocabulary(2023/09/05)

2023年09月05日 | Daily Vocabulary
31041.dwell on  (あれこれ深く考えたり心配したりすること  )to think or talk for too long about something, especially something unpleasant 
He always dwells on his mistakes.  
31042.have/feel an affinity for(with)  (〜に親近感を抱く / 〜に好感をもつ / 〜に親しみがある )
I listen to all genres of music but I've always had an affinity for jazz. 
31043.back and forth  (行ったり来たり )
Yeah, we were actually emailing each other back and forth all day. 
31044.stuck in a rut  (マンネリ化する  )
Is your relationship stuck in a rut? Maybe it’s time to shake things up and try new things out together. 
31045.know _____ by heart(暗記する
When I was a kid, I had to write the same kanji over and over in my notebook. Now I just know it by heart