図書館で予約を申し込んでから 2か月ほどかかって ようやく読むことが出来た。本の存在は書評誌で知ったが 書名に惹かれて 興味を持っ人が多いようだ。
パソコンの前でこねくり回して作った本ではなく 実地調査の数値を用いて作られているので なるほどと思わせられて面白く読み進めた。
明治維新から敗戦の年 昭和20年まで77年間 東京は帝都と呼ばれた。そして昭和20年から今年まで77年間は 首都・東京と呼ばれている。
江戸時代からすれば 合せて154年かけて日本人が作ってきた「東京」を それぞれの区に住む都民の 今日現在の「平均所帯年収」を切り口にして分析総合した面白い本だ。
この切り口を使えば 日本全国いずれの市町村にも 日本と言う国には格差と階級があると思うが この本は日本の首都である❝東京❞に焦点を当てた。
文中から一部⇒「東京を構成するそれぞれの地域も、その社会的・経済的特質によって、社会的空間の中に位置づけられるだろう。
都心のタワーマンションや歴史のある住宅地、名の知られた山の手の丘の上の住宅地などは、頂点に近いそれぞれの座標に位置つけられる。
これに対して住工混在地域としての歴史を持ち所得水準の低い下町のはずれの地域は底辺に近い場所のそれぞれの座標に位置づけられる。
こうして人々と地域が社会空間に位置づけられたときある人の住む地域はその人の社会空間における位置を表すものになる。
・・・・「どちらにお住まいですか」という問いは、地理的空間における居住地を尋ねる問いであると同時に、社会空間における相手の住所を尋ねる問でもある。
この本を読んで 「金融資産の格差」の外に「文化資産の格差」という概念を知った。この資産の格差は世代を経るにつれ広がってゆくのだが
日本国がG7の諸国の中で国の予算の「教育費の比率を一番低い」ままおいてよしとする政策が続き 国民がそれにおかしいと声を上げないなら
日本における人間間の文化資産格差も広がっていく。
出版元の紹介文
田園調布や六本木ヒルズ、山谷地区やシャッター通り、ホームレスが住む公園まで。東京23区内をほんの数キロ歩くだけで、その格差の宇宙が体感できてしまう。
東京は、世界的にみて、もっとも豊かな人々と、もっとも貧しい人々が住む都市だ。
そんな階級都市としての性格を強める23区の姿を明らかにし、そこに潜む危うさをいかに克服するかを探る。
◎ ブログ本記事掲載初出 2022年4月19日
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◎ 2023年5月9日追記
データに基ずく分析が興味深く、面白く読んだ。この本の内容は東京23区の土地の位置の歴史と現代の東京23区の位置からくる社会格差をするどく捉えている。
その捉え方の一方、他都市から若い世代が次々流れ込む東京という都市は、時代の変遷とともに、土地の価値判断基準もまた変わっていっているなとも思う。
そして神戸市の東部からあるご縁で、後期高齢者になっての歳で東京23区の最東部の区(住工混在地域としての歴史を持ち所得水準の低い下町のはずれの地域は
底辺に近い場所のそれぞれの座標に位置づけられた)に住むことになった年金生活者の身からすると、歩いて10分の範囲に歯医者や内科など医院が五つあり、
区役所の支所、郵便局があり、コンビニも五つ、また商店街には五分で行け、また広大な緑の公園にも近く 旧中川と荒川に挟まれた中洲にある
住宅工場混在地の現在の下町の鉄筋長屋つまり集合住宅の生活は暮らしやすく感じる。
ちなみに現在のところ、県民の人口は少ない順に鳥取県の54万人次いで島根県66万人 高知県68万人 徳島県71万人、福井県の76万人だ。
ところが江戸川区の人口は 2023年5月1日現在、689,042人だ。人口だけで言えば江戸川県が出来てもいいほどだ。
県の知事と東京都の一区長が同じような規模の人口を統制しているというのは不思議だ。
しかし自分の選挙区の範囲しかものを考えない衆参両院の国会議員たちは、だれも日本の国家全体の課題などは考えない。
戦後78年になる日本の県や都・府・道などの行政区の制度は、実体に合わせた見直しがもう必須の時期になっていると思うが。